尽くし系女子は再会した幼馴染に甘やかされる~恋なんてもうこりごりだと思っていたはずなのに~
私、小清水 紗菜は大手文具メーカーの企画部に所属している。近年流行のおしゃれ文具の影響か、私の属する会社もそこそこ業績を伸ばしている。
今日は通常業務の予定だったけど、上司の厚意で早めに帰らせてもらうことになった。
先日の大型プレゼンの準備で残業続きだったことを気遣ってくれたのだ。
(気分もいいし、今日はどこかで夕飯食べようかなぁ)
なんて考えて、帰路に就く。
電車に揺られること約十五分。閑静な住宅街について、私は自分の借りているアパートへと向かった。
(爽弥はどうしてるんだろ)
私のアパートには、付き合って一年半になる恋人が居候していた。
彼は宮崎 爽弥という名前で、私よりも二つ下の二十四歳。仕事がなかなか続かない気質で、現在は無職。家賃も払えずアパートを追い出され、半年前から居候している。
爽弥はろくに就活やアルバイト探しもせず、アパートに引きこもってスマホゲームばかり。家にいるからといって家事などをすることもなく、挙句生活費は全部私持ち。
けど、誰だって休みは必要だよね。今は休息期間ということにして、温かく見守ろう。
なんてのんきな考えで、私は爽弥の行動を黙認し、好き勝手を許していた。
周囲――特にお姉ちゃん――は爽弥とはさっさと別れたほうがいいと言うけど、どうしても踏ん切りがつかなかった。爽弥に上目遣いで「許して」と言われると、私はあっさりと許してしまう。
(これがちょろいってか)
でも、爽弥は今までの歴代彼氏とは違うし――と思っていたのは、きっと私の願望なのだ。
アパートに戻って、ドアノブをひねる。爽弥がいるので鍵はかかっていない。のんきに開けて、いつものように「ただいま」と言おうとして――固まった。
(なにこれ。私の知らない靴があるんだけど)
それも――明らかに女物のロングブーツ。
男物なら、爽弥が買ったんだ~と思えただろう。だけど、さすがにこれは爽弥のものには見えない。
私は焦りからか早足になりつつ、リビングの扉を開けた。