尽くし系女子は再会した幼馴染に甘やかされる~恋なんてもうこりごりだと思っていたはずなのに~
「――爽弥」

 リビングにある低いテーブルには、空になったビールの缶。黒色のソファーに腰掛け――今にもキスをしそうな、若い男女。

 男のほうは間違いなく私の彼氏である爽弥だった。

「は――なんで?」

 爽弥が目を真ん丸にして、私を見つめる。

 なんではこっちのセリフでしょうが!

「これ、どういうこと?」

 ちらりと女に視線を向ける。彼女は私よりも若く見える。多分、爽弥よりも年下。

「――ねぇ、聞いてるの?」

 自分でも驚くほどに低い声が出た。爽弥が気まずそうに視線を逸らす。対する女は、私を見て鼻で笑った。

 女は立ち上がり、私の前に立つ。スタイルを強調したワンピースが、とても似合っている。平均体型の私とは全然違う。

「……あなた、だれ」

 冷静を装って、女に問いかけた。自身の明るい茶色の髪を指で弄りつつ、私を一瞥する。

 明らかに馬鹿にしたような視線だ。

「私、爽弥の彼女だけど?」
「は? なに言ってるのよ」

 私たちは別れていない。爽弥に視線を向けると、彼は私と視線を合わせない。

 これ――浮気していたな。

(しかもなに? 人のアパートに連れ込むとか常識知らないの!?)

 浮気をする時点で常識などないに等しい。でも、今の私はそんなことどうでもよかった。

「ねぇ、爽弥。どういうつもりなの?」

 爽弥をぎろりとにらんだ。彼は少しして、テーブルをバンっとたたく。ビールの缶が音を立てて転んでいく。

「もううんざりなんだよ!」

 近隣にも聞こえるくらい大きな声だ。近所迷惑を考えてほしい。

「お前、一々口うるさいし、なにさまのつもりだよ!」
「口うるさくなんてしてないわよ」
「自分がどれだけ偉いのか知らねぇけど、俺のこと見下してんだろ!?」

 別にそんなつもりはない。私はただ、爽弥のことを助けたかっただけだ。

「大体、お前みたいな年上の女を相手にするわけないだろ。お前とは遊びだったんだよ!」

 かといって――さすがに、この言葉は聞き捨てならない。
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