獣と呼ばれる冷酷総長はベルに真実の愛を求める
「だから今度は俺らがあいつの大切なベル、お前をあいつの前で柚木さんの時のように奪う」
「そしたら今度は、隼太くんを大切に想う人があなたを傷つける」
彼の悔しさで歪んだ顔には、憎しみと悲しみが溢れて痛いほど伝わってくる。
けど、私には大切な家族がいて友達がいて誰1人いなくなるなんてことがないからわからない。
復讐は良くない、それは誰もがわかっているはずだけどもし、自分の大切な人の命が奪われたら…私はどうなるのだろう。
何もわからない私が復讐はやめてと言ったところで伝わるはずがない。
「柚木さんの仇が取れれば、俺の命はどうだっていい」
「私は…、自分の命・他人の命を軽く扱うあなたを許せません」
「俺だけじゃねえだろ? 部下から聞いた話だと、皇もうちのを止めても拳を振り下ろしてたんだろ」
思ったことを口にしてふと、またあの隼太くんの光景が思い出される。
普段、あんな優しい人が異常なほど狂ったのには理由があるはずだけど聞けなかった。
その前に私は逃げたから。
この男に言った言葉が、今だと隼太くんにも当てはまる。