獣と呼ばれる冷酷総長はベルに真実の愛を求める
私の読みは正しかった。
相変わらずその瞳に光は宿してないけど、にんまり弧を描くように笑う彼は機嫌が良さそう。
ひとまず安心、と思ったのはほんの一瞬ですぐさま心臓が飛び出るような爆弾発言をした。
「その必死な交渉乗った。じゃあ、俺の願いは学校での報告を兼ねて夜の相手をしてもらう」
「ありがとう!隼太くん!」
……『交渉乗った』が頭の90%を占めて、最後の願いを言っていたのに聞き逃した。
ううん、それは嘘でバッチリ聞こえた。
聞き間違いであってほしい……
ああ、もう。私のばかたれ!
願いを最後まで聞く前になんで食い気味でお礼なんて言ったかな。
これじゃあ私がドえむだと思われてもおかしくない。
「隼太くん、聞き間違いかもしれないからもう1回聞いても?」
「俺って獣だから女に飢えてんの。だからその相手になってよ」
や、やっぱり聞き間違いじゃなかった!
しかも、ご親切に隼太くん事情も明瞭に言ってくれてる…っ!
「ねえ七瀬ちゃん、今更むりとは言わないよね?」
ほんとはものすごーく嫌ですけど、その笑顔と圧が怖くて言えませんなんて言えるはずがない。
「はい……わ、私なりに、ガンバリマス」
この日ほど自分を恨むことはないってぐらい忘れず、苦い思い出になるだろう。
上機嫌な隼太くんと裏腹に、学校へ行けて嬉しいはずがどんよりとしたオーラを纏いながら教室へ向かうのだった。