獣と呼ばれる冷酷総長はベルに真実の愛を求める


男が動かなくなっても彼の拳は止まろうとしない。



「隼太くん!もう、いいから…っ!」


「……」


「ねえ、それ以上続けたら死んじゃう」




聞こえているはずなのに、振り下ろす腕を止めてくれない。


隼太くんを見れば、その瞳は獣みたいに鋭く今にも男の喉笛を噛みちぎりそうな光を宿していた。



…こんな隼太くん初めて見る。



怖いけど、私が止めなきゃ後で隼太くんが後悔することになる。




「隼太くん!!もう、やめて…っ!」


「どけ、七瀬。そいつはお前を傷つけた」


「私は無事だから!私の声が聞こえてるならこれ以上は彼も、あなたの拳も傷つけないで…」




私にも冷酷な口調で、鋭い瞳、体温が下がったのが自分でわかるほど血の気が引いた。


今までの隼太くんが嘘みたいで、皆が言う“冷酷無慈悲”、“獣”という言葉が納得したくないのに、納得せざるを得ない。



彼を庇うように隼太くんの前に立つけど、その私を素通りする。


そして、胸ぐらを掴んで地面に叩きつける。


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