救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~
 それまで非常に不機嫌であったのに、彼女の願いならばと、アシエード王国を救ってくれる気になった。

 我が身に実際に起こったとは言えど、信じがたい話でしかなかった。

 けれど、どうしてもサブリナは複雑な思いを抱いてしまう。

 ルーファスが呼ぶ『恋人』とは誰か。彼に説明を求めることは、とても簡単だろう。しかし、それは今この状況下では出来ない。

(魔界の門が閉じるまで、何も聞くべきではないわ。何も言わずに……何も聞かずに。時が過ぎるのを待つのよ)

 サブリナは心の中で葛藤を繰り返しながらも、貴族令嬢たちが笑いさざめく楽しげな空気の中で、黙ったままでお茶を飲んでいた。





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