救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~
 見る間に吹く風は強くなり始め、降る雨は激しさを増して来た。

 その子どもが行方不明になった原因が何なのかは、あの短い放送の情報からはわからないが、このような悪天候の中で、何かの事情で行方不明になっているのならば、命の危険があると考えられる。

「ああ。おかえり……サブリナ」

 邸の廊下の奥から現れたルーファスを見て、サブリナは微笑んだ。

 薄暗くなって来た邸の中では、灯りが灯されたばかりだ。ぼんやりと揺らめく光の中で、彼の黒いローブは周囲から浮き上がるようにして目立つのだ。

「ルーファス。ただいま帰りました。雨が降り出して、天気は悪くなるばかりですわね」

「ああ。このままでは、数時間後には嵐になるだろう。サブリナも今夜はここに泊まると良い……すぐに部屋を用意させよう」

 ルーファスが何気なくそう言えば、近くに仕えていた執事が心得たように足早に去った。

 そういった貴族然とした堂々とした振る舞いを見れば、ルーファスは人を使うことを当然としている貴族として生まれ育ったのではないかと、サブリナは考えて居た。

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