救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~
 サブリナは彼のダンスの誘いに頷きながらも、心の中は戸惑っていた。やはりルーファスは、貴族だった過去があるのかもしれない。

(私を誰かと勘違いしているのは、ルーファスが貴族だった時の恋人だと言うことかしら……?)

 大魔法使いルーファスは、いつの時代から生きて居るとも知れぬ年齢不詳で、彼の過去を知る者はもう生きて居ないだろう。

 それを知るためには、ルーファスへ直接聞くしかない。

 滑らかな動作でダンスステップを踏み、ルーファスはまったく臆することなく、サブリナと踊っていた。二人で目を合わせて、お互いを見ていた。いつのまにか周囲のことは、気にならなくなっていた。

 ルーファスが今、アシエード王国で、一身に注目を集める存在であることは間違いない。そんな彼と共に居るサブリナだって、その他貴族からすれば興味津々になるだろう。

 ついこの前に社交界デビューしたての令嬢が、大魔法使いと共に居る。何があるんだと、会場中が二人に注目しているはずだ。

 けれど、今はそんな誰かの事は気にも留めなくなっていた。

 美しくきらめく紫の瞳。謎多き大魔法使い……そして、あの時に初対面だったはずのサブリナを、自分の恋人だと呼んだ男性。

(ますます、わからないわ……過去に私と似ている人と交際していた……? それならば、名前で気が付くはずよ。それなのに、ルーファスは私がサブリナだと聞いても恋人だと言って譲らない)

 自分を見つめるサブリナの視線に視線を合わせながら踊る、ルーファスの胸の内などわかるはずもなかった。




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