救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~
「ルーファス……その」

 慰めの言葉を口にしようとしたサブリナは、何も言えなくなった。いくら考えても、ここで相応しい言葉が見つからない。

 ルーファスはそれを当然のような顔をして、受け止めていた。彼はこれまでに何度も同じように、誰かにこの話を話したことがあるのかもしれない。

「あの時の事を、何度も何度も思い返したよ。僕はどうしたら良かったのかとね……けれど、僕が自分が魔物の好物だと知る前に、故郷は滅びてしまう」

 遠い過去を思い返すようにして、ルーファスは白い波面の広がる青い海を見ていた。

「……いくら考えても、無理なんだ。すくい上げようとしても、この手をこぼれ落ちる砂のようだ。終わってしまった過去、決まってしまった運命は、変えられない……」

 ルーファスは足元にある白い砂を手で掬って、そして、落とした。ゆるく吹く風に砂の粒は呆気なく散っていく。

 ルーファスは公国の公子であったならば、国を守り国民を導くようにと教育され育てられたはずだ。だと言うのに、彼は自分のせいで滅んでしまったと知ってしまった。

「けれど……それは、ルーファスの責任ではないですわ」

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