救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~
「魔力を持つ人間は、魔物を呼び寄せてしまう。僕もいつか……魔力を失えば、魔物に喰われることになるだろう」

 海の方を振り返り、ルーファスはそう言った。もう何もかも、たとえそうであったとしても、受け入れるしかないと言いたげに。

「そんな……」

 サブリナは自分の最後を悟っているルーファスに、絶句してしまった。

「ああ……いや、これからはサブリナが、傍に居てくれるね。僕が死んだらどうか、身体は燃やしてくれ。自分が憎らしいあの魔物の力の元になるなど、絶対に嫌だ」

 湿っぽくなってしまった空気を変えるように、ルーファスは微笑んで言った。

(それは……それは、彼のお願いだから、聞いてあげたいけれど……けれど)

 サブリナの願いだからと聞いてくれた彼ならば、お返しするように聞いてあげるべきだと思う。

「私は絶対にしません。それが嫌ならば、生きてください」

 はっきりと願いを断ったサブリナにルーファスは、微笑んで頷いた。

「そう言われてしまうと、仕方ない……わかったよ」

 それから二人は黙ったままで、繰り返す波の音を聞いていた。

(ルーファスはやはり、元々身分ある男性だった。だから、上手く踊ることも出来るし貴族の礼儀作法もわかっているのね。けれど、あんなに悲しい過去を持っているなんて……)

 自分のせいで故郷の国が滅んでしまうなど、どれほどの心の傷を負ったのか、サブリナには想像することも出来ない。





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