救う気ゼロの大魔法使いは私だけに夢中。~「迎えに来るのが遅くなってごめんね」と助けてくれた見知らぬ美形に話を合わせてみたら~
「ああ。長い時を生きていると、わかった。たまに居るんだ。僕のように魔力が強過ぎる人間は。しかし、育つ前までに魔物に喰われて居なくなってしまうのが殆どだ」

「……魔力が強いと、育つ前に……」

 それを聞いて、サブリナは背中にぞっとするものが通り抜けた。ルーファスはいわば王子のように守られる立場であったから、生き残れた。

 けれど、通常平民にはそのような加護を持つ者はない。

「赤ん坊は自分の魔力を隠すことすら、何も知らない」

 魔力を持って生まれるということは、先んじてそれを知ることは出来ない。

 他人事のようにルーファスは言ったが、彼は生まれる先を間違えば、生まれ落ちたその瞬間から狙われてしまっていたのかもしれない。

 奇跡的に自分は生き残ることが出来たものの、ルーファスの心には大きな傷が残っているのだろう。

「ごめんなさい……私は、ルーファスのように便利な魔法が使えるなんて、羨ましいとしか思って居ませんでした。恥ずかしいわ……」

 ルーファスの壮絶で悲しい過去を知れは、そんな思いがどれだけ浅はかさだったかを知ってサブリナは恥ずかしくなった。

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