セフレな二人は恋人未満
 ……まったく、どいつもこいつも。

 イラつくとニコチンが恋しくなる。けれど職場は、役所の庁舎内のすべてが禁煙だからどうしようもない。我慢するしかない。

 スモーカーのおじさん職員たちは、職場をこっそり抜け出し、人目につかない庁舎裏の片隅で吸っている。が、しかし、それは禁止行為だ。服務規定違反だ。

 曲がりなりにも係長の私が「仕事をサボってタバコを吸っていた」などと、誰かから後ろ指をさされるような、みっともない真似はできない。大学生の頃からの喫煙をやめられない自分も悪い。

 部課長を交えた不モな会議が終わり、殺風景な薄暗い廊下をイライラしながら職場へ戻る途中で、スマホが振動した。見ると、きみからのLINEだった。

"今日会えるかな"

 そっけないメッセージへ、

"いつもの場所で"

 そっけない返信をし、スマホをしまう。

 夕方まで、きみに会うまでの辛抱だ。いつものホテルの部屋で、いつものように思いっきり吸ってやる。
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