虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
「高杉社長との結婚を断った以上、これが最善だと思うが」
「は、はい。都々木部長のお気持ちはわかっています。私のために申し訳ございません」
岳の本心がわかっているとは思えない。おそらくなにか誤解しているはずだ。
それでもこの契約は真矢を守るためだから、今はそれで十分だ。
「なにか必要なものがあれば言ってくれ」
ここで暮らす以上、殺風景な部屋のままでは味気ないだろうからインテリアデザイナーを呼んでいると伝えたら、真矢は驚いていた。
「そ、そんな! もったいないです」
「君は都々木岳の妻になるんだよ」
メゾネットタイプの二階部分に真矢が住むことを決めた。
真矢のためのベッドやドレッサーも好きなものを選ばせて、なるべく早く居心地のいい場所にするつもりだ。
対鶴楼の近くに借りている家は、仕事であちらに行ったときに使えるだろう。
「妻だなんて……夢みたい……」
「え?」
驚いて真矢を見たら、見る見るうちに真っ赤になった。
無意識につぶやいたらしく、聞かれたとは思っていなかったらしい。
「夢じゃない。現実だよ」
真矢は頬に手をあてたままコクリとうなずいていた。
岳の妻になることを「夢」と言うくらいだから、好意は持ってくれているらしい。
真矢の様子がかわいすぎて、抱きしめたい衝動に駆られた。だが病み上がりの真矢に無理はさせたくない。
岳の気持ちはすでに結婚というゴールに向けて走り出しているが、真矢の気持ちはまだ戸惑いの中なのだろう。
ゆっくりでいい。真矢の気持ちがまっすぐに岳に向いてくれる日を待つだけだ。