虐げられ続けた私ですが、怜悧な御曹司と息子に溺愛されてます
「失礼いたします」
真矢がノックして入ると、応接室とは思えないくらい広々とした空間だった。小ホールと呼んだ方がいいかもしれない。
しかもカーテンや家具は優美なしつらえで、クラシックな雰囲気だ。普段は外国からの賓客を迎える部屋として使われていそうだ。
どっしりとした応接セットには、すでに社長と岳が座っている。
ひとり掛けに社長がゆったりと座り、岳はその斜めの位置にある三人掛けのソファーだ。
「真矢、こっち」
岳に呼ばれて隣に立ち、すぐに社長に挨拶をした。
「鶴田真矢と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「岳の父です。君のことは華怜からも聞いていますよ」
どんなことが社長に伝わっているのか心配になったが、その気持ちが伝わったのか、岳が隣に座るようにポンポンとソファーをたたいた。
「岳、お前でもそんなことするんだな」
父親にもクールな一面しか見せていなかったのか、今のしぐさだけで社長は驚いている。
「どうやら息子は、あなたには気を使っているようですね」
「はい。とても優しくしていただいております」
岳にはいいところがたくさんあると伝えたくて優しさを強調したら、社長に笑われてしまった。
「ハハッ、それはよかった」
「俺のことはともかく、なんで真矢まで呼びつけたんですか」
どうやら岳も、真矢が応接室に呼ばれた理由がわかっていないらしい。
「うん。ややこしい人が帰ってきてね」
「は?」
「ここに呼んでいるから、一気に話したほうがいいだろう」
いったい誰が帰ってきたというのだろう。真矢には見当もつかないが、岳はキュッと眉を寄せた。
「まさか」
「そのまさかだよ」
ふたりには通じあっているらしい。
真矢が誰だろうと思っていたら、応接室のドアがノックされた。
「来たよ」
「来ましたね」