神殺しのクロノスタシス7〜前編〜

side令月

ーーーーー…聖魔騎士団の三人と、それからマシュリが走り去った後。

僕と『八千歳』、それからイレース先生と不死身先生と、そして天音先生だけが残った。

天音先生は回復魔法専門だから、戦力には加えないとして…。

その分、不死身先生に2倍働いてもらうということで、良しとしよう。

「うわぁ。令月さんが地味に酷いこと考えてる…」

酷いこと考えたつもりはなかったんだけど。

「心配しなくて良いよ。僕も働くから」

僕は、両手に愛用の小太刀を構えた。

キルディリア魔王国の魔導師を相手にするのは、初めてだね。

物凄く魔法が得意なお国柄だと聞いている。

だけど、元々ろくに魔法の使えない僕には関係ない。

器用な『八千歳』と違って、僕の戦い方はいつだって同じだ。

魔法の使えない僕一人だったら、キルディリア魔王国軍の魔導師を相手にするなんて、荷が重かっただろう。

だけど、今は隣に『八千歳』がいる。

『八千歳』はいつも通り、両手に透明な細い糸を絡ませた。

校舎とは分断されたけど、ここはイーニシュフェルト魔導学院であり、隣に『八千歳』もいる。

二人で連携すれば、敵を一網打尽…。

…までは出来なくても、さっき分かれていった聖魔騎士団組が、壁を破壊するまでの時間は稼げるはずだ。

根拠はないが、自信はある。

それに今は、イレース先生や不死身先生までいるのだ。

ますます、負ける気がしない。

こちらが劣勢なら、下手に攻撃を仕掛けるべきではない。

むしろ、突破されないよう、敵を迎え撃つことだけを考えるべきだ。

だけど、僕はこの状況を劣勢だとは思っていなかった。

充分押し返せる。

それに相手は、どんな魔法を使ってくるのか、どんな作戦を考えているのか分からないのだ。

ならば、仕掛けられる前に、これ以上敵のペースに乗せられる前に、こちらから仕掛ける。

「『八千歳』」

「分かってる」

『八千歳』も、僕と同じことを考えていたようだ。

僕は地面を蹴り、同時に『八千歳』も、強靭な凶器の刃を迸らせた。

敵の本陣、その先頭に肉薄した…。



…その時だった。

「mtors」

僕らが攻撃を仕掛けるのを、待っていたかのように。

本陣の先頭の魔導師が、杖をこちらに向けた。

その瞬間、僕は抗い難い、凄まじい強風に身体を煽られた。

「ぐっ…!?」

丁度、小太刀を振りかぶった体勢を取っていた僕は、無抵抗に、その強烈な向かい風を受け。

身体がふわりと舞い、ボールを投げるかのように、遥か後方に吹き飛ばされた。

まるで、押し潰されるような凄まじい威力だった。

「っ、『八千代』!」

『八千歳』が叫び、敵に向けようとしていた糸を、咄嗟に僕の方に伸ばした。

『八千歳』の放った透明な糸が、しゅるしゅると僕の身体に巻き付いた。

と同時に、

「かはっ…!」

僕は、建物の壁に思いっきり背中をぶつけた。

内臓を直接殴られたかのような強い衝撃に、思わず、一瞬息が止まった。
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