妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
 伯父の口振りに、アドルグは父が何かを隠しているということを理解した。
 しかしながら、考えてもわからない。事情があったにしても、メイドとの間に子供を作った理由がアドルグには思いつかなかった。
 故にアドルグは、クラリアが父の子ですらないとさえ考えた。事情があって匿っているという可能性さえも、彼は考慮したのだ。

「……イルリオ、もう隠すのはやめにしましょう」
「レセティア、しかし……」
「このまま隠していても、事態をややこしくするだけです。恥を忍んで話すしかありません……お義兄様、できればアドルグには聞かせたくないのですが」
「アドルグはヴェルード公爵家を何れ背負うことになる。聞かせぬ訳にもいかぬだろう」
「……そうですか」

 母親からの視線に、アドルグは居たたまれなくなっていた。
 とはいえ、彼もその場を離れるつもりはない。ヴェルード公爵家の次期当主として、ここにいることが自分の使命であると、彼は強く認識しているからだ。
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