妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
 ウェリダンお兄様は、眉間に皺を寄せていた。
 それはなんというか、後悔しているような表情だ。それがわかる程に、お兄様の表情は変化している。

「皮肉なものですね。妹を傷つけたという後悔は、僕が欲しかったものを手に入れさせてくれたなんて……素直に喜ぶことはできません」
「……だけれど、それだけあなたの心を揺さぶることだったということなのでしょうね。納得できない訳ではないわ。深い絶望というものも、感情の動きではあるもの」
「あの……私は、そんなに傷ついていませんよ?」

 ウェリダンお兄様とイフェネアお姉様の会話に、私は思わず口を挟んだ。
 二人はさも私を傷つけたという前提で話を進めている。ただそんなことはない。そこまでひどいことをされたとも思っていないのだが。
 結果的にウェリダンお兄様が表情を作れた訳だが、私も喜んでいいのかよくわからなくなっていた。そのため苦笑いを浮かべることしか、できなかったのである。
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