桜ノ丘の約束-10年前の後悔-

第26章:将貴の挑戦

1. 独立への決意
   再会から数週間後——。
 将貴は、自宅のデスクで資料を広げ、パソコンに向かっていた。
 ——独立する。
 桜ノ丘で誓いを立ててから、彼はこの目標を見据えてきた。
 長年会社で培った経験を活かし、自分の力で仕事をしていく。
 だが、現実は簡単ではなかった。
「……何をするか、ちゃんと決めないとな。」
 会社を辞めた後も、まだ明確なプランは立っていない。
 ただ漠然と、「自分の力で何かを始めたい」という気持ちだけが先行していた。

2. ビジネスの方向性を探る
   数日後、将貴は起業支援セミナーに参加した。
「自分の得意なことを活かして、社会にどんな価値を提供できるのか。それを考えることが、起業の第一歩です。」
 講師の言葉に、彼は深く頷いた。
 ——自分の得意なこと。
 今までやってきたことは何か?
 ・プロジェクトの管理
 ・企業の経営戦略立案
 ・チームをまとめ、成果を出すこと
「……やっぱり、コンサルティング系の仕事か?」
 企業や個人の経営をサポートし、"組織がうまく機能する仕組みを作る"仕事。
「これなら、自分の経験を活かせるかもしれない。」
 将貴は、少しずつ方向性を定め始めた。

3. 仲間たちへの相談
   その夜、将貴はグループチャットにメッセージを送った。
将貴:「俺、起業しようと思ってる。」
泰亮:「マジか!?」
智香:「すごいね……!」
基翔:「もう決めたのか?」
将貴:「まだ具体的には決まってない。でも、コンサルティング系の仕事を考えてる。」
 一瞬の沈黙の後、泰亮からメッセージが届いた。
泰亮:「だったら、俺の会社の研修プログラムの見直しを手伝ってくれないか?」
「え?」
 将貴は、思わず画面を見つめた。
泰亮:「お前の知識と経験があれば、うちの組織改革に活かせると思うんだ。」
基翔:「俺も協力できるかもしれない。組織のメンタルヘルスとか、社員のケアの面で。」
「……みんな、すげえな。」
 仲間たちが、それぞれの分野で力をつけていることを改めて実感する。
「なら、俺も負けてられないな。」
 将貴は、改めて気合を入れた。

4. 初めての案件
   数週間後——。
 将貴は、泰亮の会社で初めてのコンサルティング案件に取り組んでいた。
「うちのチームは、個々の能力は高いんだけど、連携がうまくいってなくてな。」
 泰亮が、社内の課題を説明する。
「なるほどな。じゃあ、まずは業務フローの整理と、チームビルディングの研修を提案しよう。」
「頼む。」
 彼は、資料を作りながら実感した。
 ——自分のスキルが、人の役に立っている。
 それは、会社に勤めていた時とは違う感覚だった。
 "自分の選んだ道"を歩んでいる実感があった。

5. 未来への一歩
   数日後、初めての研修を終えた後、泰亮が声をかけた。
「お前、やっぱりこういう仕事向いてるよ。」
「そうか?」
「ああ。お前の説明、すげえわかりやすかったし、実践的だった。」
「……ありがとな。」
 将貴は、少し照れくさそうに笑う。
「でも、まだまだこれからだよ。」
「だな。」
 彼らは、がっちりと握手を交わした。
 ——俺は、この道で生きていく。
 その決意を胸に、将貴は次のステップへ進んでいった。
(第26章・終)
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