相思相愛・夫婦の日常~ひか♡ちな編~
光琉のいない夜
「――――じゃあ…行ってくるね…?」
「うん…」

今日は、光琉の一泊の社員旅行。
自宅マンション前で、切ない別れをしている二人。

「ちなちゃん」
「うん…」

「ちなちゃん」
「大丈夫だから、行って?」

「あ、いや…」
「何?」

「手、離してくれる?」
「え?
…………あ…」

千波は無意識に、光琉の着ているカーディガンを握りしめていた。

優しく千波の手を取ると、そのまま握って「電話するからね!」と微笑んだ。

千波が頷き、光琉は小さく手を振り行ったのだった。

力なく手を下ろす、千波。
大きなため息をつく。

家に戻り、光琉のトレーナーを着る。
何も考えたくなくて、そのままベッドに入った。

しかし……
一分もかからない内に、ガバッと起き上がった千波。

また着替えて、マンションを出ていった。

“やっぱ、駅まで一緒に行こう!”
そう思い立ったからだ。

全速力で走り、光琉を追う。
「あ…ひかく――――
……………」

なかなか追いつけなくて、結局駅に着いてしまう。
すぐに光琉を見つけたが、女性社員に囲まれていた。

それを見て、落ち込んだように肩を落とし踵を返した。

せっかく街まで出てきたので、ショッピングでもすれば気分転換になるかもと思い、駅ビルに入った。

なんとなく服や靴などを見ていると……

「ちーちゃん?」
声をかけられ振り向くと、里海が立っていた。

「あ、里海ママ!」

「フフ…お買い物?」

「うん」

「1人?」

「うん」

「じゃあ…私も一緒にい?」

「うん」

一緒に服を見る。
二人とも小柄。
服の趣味も同じなので、実はショップで会うことが多い。

「あ!これ、ちーちゃん合いそう!」

「そうかな?
里海ママの方が合うよ!
可愛いから!」

「フフ…ちーちゃんには負ける!」

「ううん!
里海ママは、とっても綺麗だよ!」

「ありがとう!」

「………」
なんだか元気のない千波。

里海が心配そうに顔を覗き込む。
「ちーちゃん、どうしたの?」

「里海ママって、職場で男の人に告白されたりするの?」

「え?」

唐突な言葉に、里海はびっくりし言葉に詰まっていた。


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