Embrace ーエリート刑事の愛に抱かれてー

広之の新住所が自分のアパートの目と鼻の先にあったというのもショックだった。

もしどこかで自分とばったり会っても、無視するつもりだったのだろう。

どこまで人を馬鹿にすれば気が済むのか。

きっと自分以外にも、広之に非道(ひど)いことをされた人間がいるのだ。

そしてその人間に広之は殺されたのだ。

広之が死んで、悲しくもないし、嬉しくもない。

お腹の子が流れた時、広之への未練や恨みといった全ての感情は消え去った。

そしてたったひとり自分を求めてくれた行きずりの男に、身も心も助けられた。

もうそれだけで十分だった。

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