true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
「久々だと疲れるね。駅前で買い物して帰ろうか」
「お疲れ様でした。どこかでワインを買って行きますか?」
「いや、ワインはある時まで飲まないと決めたんだ」
「ある時・・・ですか?」
「もっと先の話だよ。勿論、その時が来たら、心海の隣で飲むからね」
「はい・・・傍にいさせてください」
肩を抱き寄せられて、嬉しくて腰に手を回すと、
「心海・・・キスしたい」
まるで、子供が何かをねだるように、甘えた声で囁いた。

無造作の髪型の今なら、誰もあの敏腕弁護士の片桐所長とは思いもしないはず・・・
そのせいなのか、優聖さんは喫茶店の時といい、今といい、緊張感がどこか無い・・・
「ダ、ダメです・・・家まで我慢してください」
「無理・・・」

駅の近くにある並木道は、家路に向かう人達が寒さのせいか、足早に通り過ぎる。
コートの中に、私を包み込み、銀縁眼鏡を外して、そっと唇を包みこんだ。

推しマスターの風貌で、優聖さんにキスをされたのが初めてだったから、凄く新鮮で緊張する。
嬉しくて、キスに応えて声が漏れた。

「何だか・・・いつもと違うね、心海」
「憧れていたマスターの風貌だから・・・それに、外でこんなこと・・・」
「もしかして・・・浮気しているみたいで興奮した?」
「ち、違います!どの優聖さんも・・・ドキドキしますから・・・夫になっても、どんな優聖さんも素敵で・・・」
「全く・・・俺を嫌う検事達が知ったら嘆くよ。妻には負けっぱなしだってね」

私の頬を指でそっと撫で、優しく微笑む。
「冷えたね。家に帰ったら、直ぐに温めるからしばらく我慢して」
「温める?」
「違ったか?そうか、溶けるだね」
「それは・・・優聖さんのせいですから・・・」
「これからは、違う俺を堪能させるよ。週替わりにしようか?」
「もぉ、止めて下さい!」
火が噴き出しそうなくらい、恥ずかしくて耳や首まで赤くなる私を、笑いながら楽しんでいる。

そんな2人の元に、新しい命が舞い降りて来たのは、言うまでもなく・・・
< 100 / 106 >

この作品をシェア

pagetop