true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
お店に出るからと、指輪を外してるから、相手の人は優聖さんが、結婚しているとは思わない。

嫉妬で、『私の夫です!』って、言っちゃいそう・・・
そんなこと言えば、余裕無い妻だと、恥ずかしい思いをさせちゃう・・・
気持ちの葛藤は、目の前のカップの中を見つめるしかなかった。

「心海」
名前を呼ばれて、顔を上げると、顎に手が掛かり、持ち上げられたと思ったら、そっとキスされた。
「ゆ、優聖さん!ひ、人前で・・・」
「どうして、私の夫ですと言いに来ないのかな?」
「そ、それは・・・」
「俺は言えるよ」
優聖さんが大きく息を吸ったのを見て、立ち上がって思わず口を塞いだ。
「は、恥ずかしいです・・・」
手を離して俯くと、頭をポンポンと撫でてくれた。
「ワインを飲む時は、心海と一緒だから。いいね?」
「・・・はい」
周りに誰もいないかのように、私の手を握ってニコニコしていた。

ガタッと椅子を引く音に女性を見ると、憤慨しながら、雑に荷物を持ち始めた。
「お帰りですか?ご相談があれば、事務所にどうぞ」
「もう2度と来ないわ!」
私の顔を見て、ふんっ!と鼻を鳴らすように、目を逸らし、支払いをして帰って行った。

「ごめんね、遅くなって。助かったわ」
女性と入れ違いに、小巻さんと両手に荷物を持ったこまさんが、帰って来た。
「いえ、久々で楽しかったですよ」
「さっきの人、依頼人?」
「えぇ、正しく言えば、だった人、ですが、もう来ないでしょう。小巻さん、俺達帰りますね」
「2人とも、ありがとうね」
後は小巻さん達に任せして、私達は店を出た。
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