true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
迎えた約束の土曜日
お店は、心聖より駅に近い創作料理店の個室。
先にお店に着いて、席に座って待っていた。

「深澤、お待たせ」
「私も今、来たところなの」
三多君は、向かいの席じゃなく、私の隣に座った。
「あ、あの・・・」
「料理は適当に頼んでるから。お酒は飲まないの?」
私が戸惑ってることも気にせず、メニューを広げた。
「私、アルコールはダメで」
「じゃあ、俺はビール飲もうかなぁ」
少し離れてはいるけど、机を隔てて座っているのと、少し動くと触れるほどの距離に座っているのとは、訳が違う。

「三多君・・・隣・・・なの?」
「うん、どうして?」
「向こう広いから」
「だって、ここも空いてるだろ?」
「そ、そうだけど・・・」
「気にせず食べようよ。なっ?」

2人で食事をする時間。
あの三多君と隣同士に座って、話をしている。
クラスメイトの中で、唯一、優しくしてくれた男子だった。

話している途中で、何度も手を握られ、
「ごめん、好きな子に触れたくなるのは、男の性なんだ」
食事は対面でするものと思っていたけど、個室で隣に座ってそんなこと言われると、恋愛音痴の私は、どうしていいか分からない。

でも・・・
どこかで、付き合ってもいいのかな・・・って思ってしまう。

「あのさ、この間の返事だけど・・・」
「正直・・・まだそこまでは・・・」
「俺の本気を知って欲しい。毎日、深澤のことばかり考えているんだ」

ギュッと力強く手を握られ、熱い眼差しに見つめられると、体が硬直した。
ゆっくりと顔が近づいてくる・・・
これって・・・キス・・・される。
逃げないと・・・頭では分かっているのに、体が・・・動かない。
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