true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
♪~♪ヴゥー、♪~♪ヴゥー・・・
着信音と振動が、緊張の沈黙をかき消した。
画面を見た三多君は、慌てて電話を取って、
「ごめんね、メッセージ気づかなかった・・・どうしたの?」
そのまま、部屋を出て行った。
ホッとして、大きく深呼吸をすると、強張った体の力を抜ける・・・

さっきまでの出来事にドキドキしてる。
もし、電話が鳴らなかったら・・・

しばらくすると、三多君は緊張した面持ちで部屋に入って来たけど、私の顔を見て引き攣るように口角を上げた。
「ごめんね、後輩から急用で・・・」
「大丈夫なの?深刻な話なんでしょ?」
「もう、話は終わったから大丈夫。そろそろ・・・出ようか」

店の外に出て、時計を見ると、もうすぐ8時・・・
「そろそろ帰るね」
「あのさ・・・今から明日のお昼頃まで、時間があるんだ。その間で、好きにさせるから、一緒に過ごしてよ」
「えっと・・・まだ気持ちの整理がつかないし、付き合ってもないし」
「今日はこのまま2人で過ごしたい。俺のこと、嫌い?」
「嫌いとかじゃないけど・・・」
「さっきは、深澤の気持ちを確かめずに、キスしようとした。ごめん。でも、本気なんだ」
じっと見つめる視線に、高校生の頃の三多君が重なる。

「深澤の家に、行って一緒に過ごしたい」
家に人が来ることなんて無いし、まして、男の人を部屋に入れるなんて・・・
「勿論、家に行っても、さっきみたいな事はしない。付き合うまで、手は出さないよ。約束する。深澤のこと、大切にしたいから」
「・・・本当に?信じていいの?」
「信じて。もっとたくさん話をしたい。それだけだから」
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