true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
客室を出てリビングに向かうと、無造作に置いてあった片桐さんの携帯が振動した。
表示された名前は・・・千佳さん・・・
しばらくして止まると、直ぐにメッセージが入り、目に飛び込んだ。
『昨日の夜は、乱れた姿を見せて』
見てはいけない・・・直ぐに目を逸らした。

乱れた姿を見せる・・・口紅が付いたシャツ・・・
千佳さんは・・・想いを叶えたんだ。
好きになった私にとって、残酷な真実だった。

ガチャッ!
その時、バスルームのドアが開き、慌ててその場から離れた。
「もうこんな時間か・・・直ぐに準備するよ」
「はい、ソファに座って待ってます」
胸が張り裂けそうになりながら、笑顔を繕う。
携帯を手に取り、メッセージを見た片桐さんは、小さくため息をつき、そのまま部屋に入って行った。

本当の恋人になれるなんて、あり得ないのに・・・
片桐さんが、本気で私を好きになるなんて無いのに・・・
私は、何を期待しているんだろう・・・
片桐さんが千佳さんと関係も持ったとしても・・・
咎める権利なんて無い・・・

今日は・・・
1日だけ偽りの恋人を演じきろう・・・

2人で朝食をとりながら片桐社長とお兄さんの亮聖さんを待つ時間。
緊張が高まる。

その時、片桐さんの携帯が鳴り、ビックリして思わず飛び上がりそうになった。
「はい・・・・・・えっ?・・・・・・今傍にいるけど・・・分かった」
凄く機嫌悪そうに私を見て、一瞬、間を空けた後、ため息をついた。

「ごめんね、父さん達、急用で会社に戻らないといけないらしい。お詫びをしたいって。ビデオ通話にするよ」
急な事に、慌てて服を整えて、隣に密着して座った片桐さんに、
「ごめんね、肩触るよ」
耳元で囁かれ、更に肩を抱き寄せられ、顔を引きつらせながら笑顔を作った。
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