true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
「冷静なお前がそこまで言うなら、話を聞こう」
大きく深呼吸をし、眼鏡をかけ直して、心海のお兄さんから聞いた話をした。

「そうだったのか・・・片桐総合建設は、創業者はとても生き様が豪快な人でね。職人さんにお腹が減るだろうと、ご飯を振る舞っていたらしい。職人さんあっての自分だからってね」
小さい頃・・・会長にもそんな事、聞かされたなぁ。
「いい時代になった。その分、欲を間違った方向に得ようとする人も増えてしまった。私が話をつけよう」
「力を借りに来たわけじゃない。知らないなら、俺がケジメをつける」
「優聖。僕は、副社長として、今回の件は、きっちりと解決したい。孫請けが辛い思いをしているのを、知らぬ顔はしたくない」
「亮聖・・・」
それまで黙っていた亮聖が、口を開いた。

「直ぐに緑都木(みどりつき)社長を呼ぼう」
「勝手に動くわけにはいかない。心海のお兄さんに話を聞いてからだ」
「分かった。優聖、僕は今、副社長として前に進めたのは、心海ちゃんのおかげもある。離すなよ」
「あぁ、勿論だ」
俺は、夜中に家に戻り、寝ずに戦略を練った。

明くる日、心海は事務所には出勤せず、加東君には体調不良でしばらく休むと伝えた。
こまさんにだけ、事情を説明すると、
「何か因縁を感じるね。絶対に負けるなよ」
怒りを抑える表情は、俺と同じだろう。

事務所は2人に任せて、心海のお父さんの様子を見に病室に向かうと、佳孝さんが出て来た。
「片桐さん・・・」
「お見舞いをさせていただきたくて」
「お帰りください。ようやく父は落ち着いてきたところです」
「経営の方は・・・」
「駆け回っているところですよ」
「私に・・・この話を預けてもらえませんか?」
「弁護士に頼むことがあれば、他に頼みます」
「心海さん・・・心海さんはお元気ですか?」
「・・・今朝、退職届は送りました。帰ってください」
背中を向けて、病室に入って行った。

お金だけの問題なら、俺が解決出来る。
だか、道理に反することを、見逃すわけにはいかない。

ここで諦めるわけにはいかない。
心海をこの手に取り戻す。
そして、心海の家族を守る。

上着の襟を正し、急いで事務所に戻った。
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