true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
悲しんでいる時間が惜しい。
まさかと思うが、俺と心海を引き離そうとしてるのか?
直ぐに、実家に向かった。

「どうした?急に」
何事も無かったように、父さんは笑って椅子に座っている。
「心海ちゃんは元気にしてるの?」
亮聖の言葉に黙っていると、
「何か・・・あった?」
俺のただならぬ空気を察したようだな。
ただ、亮聖は、心海のことを少なからず理解している。

「そうか、お前もようやく、自分の立場が理解出来たんだな。彼女と別れたなら、お見合いの話も直ぐに」
父さんの言葉に、怒りの感情が沸々と込み上げてくる。
やはり・・・仕掛けたのか?

「心海とは別れていない」
「あんなに大人しそうな子が、お前を支えられるはずが無い。片桐総合建設の次男で、優秀な弁護士のお前を」
「だから、心海の実家を潰しにかかったのか?わざわざ、二次請けの会社を使って」
「何を言ってる?二次請けのことは、元請けが管理してるだろ?」
「ミドリツキが、深澤建築に損失を被るように、仕向けているのを知らないのか?」
「何の話だ?」
「ミドリツキといえば、こまさん、俺の恩師が前の会社を辞めるきっかけになった、提訴した会社だ。覚えてるだろ?」
「あぁ、あの裁判か。でも、あれは原告側が解釈を間違っていたと、証言があっただろ?」
「違う!あの証人は、証言を覆したんだ。俺達の前で、証言した事を『そんなこと言った覚えは無い』と、逃げるように立ち去った!」

愛する心海と恩師のこまさんのことが頭を駆け巡り、初めて取り乱した。
裁判から帰って来た後のこまさんの喪失感は、今でも忘れない。
俺が感情を露わにしたことに驚いた父さんは、しばらく黙っていた。
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