true or false~銀縁眼鏡を外した敏腕弁護士は、清純秘書に惑溺する
その人が顔を上げた。
あれは・・・優聖さん・・・

そう分かった瞬間・・・
私は、駆け出していた。

慌ててドアを開けて、
「優聖さん!」
声を掛けて、駆け寄り傘をさした。
「どうして・・・こんなに濡れて・・・」
「ひと目会いたい・・・そう思ったら、ここに来ていた」
「もう・・・私のことなんて・・・」
「心海・・・必ず俺が何とかする。だから・・・俺の所に・・・戻って・・・来て」
ゆっくりと私の肩に、もたれかかる優聖さん・・・熱い・・・
「優聖さん、熱が・・・少しだけ頑張ってください」
優聖さんを支えながらゆっくり歩き、家に入った。

「お兄ちゃん!ちょっと来て!」
「何だ!?そんな大きな声を出して・・・どうして、片桐さんが・・・」
「いいから!熱があるの、早く部屋に運んで!」
「心海、バスタオルと俺の部屋の着替え持って来い」
お兄ちゃんに優聖さんを任せて、慌てて取りに行った。

それからは、お兄ちゃんが優聖さんを着替えさせて、布団に寝かせていた。
「全く・・・あんなに凜としっかりした人なのに・・・」
「凄くね、優しい人なの。困っている人がいたら見過ごせない。いつも冷静でいるように見えて、困ってる人のためには、凄く熱くなるの・・・」
事務所で楽しく過ごした日々を思い出す。

「優聖さんの恩師のこまさんはもっと熱いのよ。奥さんのサンドイッチは凄く美味しい。2人の掛け合いも楽しいの。先輩の加東さんは、いつもフォローしてくれて・・・」
「心海の笑顔を久々に見たな。ミドリツキに対する腹立たしさと、父さんが倒れて、資金繰りにも困って、焦るばかりだった。矛先を間違えていたよ」
「お兄ちゃん・・・」
「片桐さんが起きたら、教えてくれるか?傍にいるんだろ?」
「うん・・・傍にいたい」
お兄ちゃんは、私の頭を撫でて、部屋を出て行った。
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