クールなエリート警視正は、天涯孤独な期間限定恋人へと初恋を捧げる
声の主は、彼女のことを真っすぐに見据えていた。
(警視正の近江圭一。まさかまた助けられるなんて……)
トクントクン。
紗理奈の鼓動が高鳴っていく。
けれども、警察相手に心をときめかせている自分のことを認めたくなくて、紗理奈はふいっと顔を背けた。
「ちっ、なんだよ、連れがいるなら仕方ないな」
チャラチャラした男の腕がパッと離れる。
紗理奈がバランスを崩して倒れかかった。
「きゃっ!」
転倒して地面に頭をぶつける!
覚悟を決める。
けれども……
そのまま地面に倒れ伏してしまうことはなかった。
ふわり。
(あ……)
なぜならば、紗理奈は近江に抱き寄せられていたからだ。
紗理奈の肩に近江の厚い胸板が当たる。一見すると細身だが、警察官なので鍛えているのだろう。
彼の端整な顔が間近にあって、先程から鼓動が落ち着かない。
チャラチャラした男は、そそくさとバーの玄関から立ち去って行った。
店内の端の方での出来事だったからか、マスターも今しがたの事態には気づいていないようだ。というよりも、日常茶飯事で起きている出来事だから、敢えて無視しているのかもしれない。
紗理奈は逸る鼓動を落ち着けるために深呼吸をした後、思い切って近江へと声を掛ける。
「離してくださいますか?」
「ああ、すまない」
近江の方から紗理奈の身体からパッと離れた。
彼の温もりが去ると、少々寂しくなってしまう。
「逃げたところで同じだ、君は俺たち警察から保護対象としてマークされている。どこに行っても居場所は分かる」
「だったら、私の許可なんか取らずに、勝手にそうしていたら良いじゃないですか」
紗理奈は近江の顔を直視できず、ふいっと顔を背けた。
近江の顔を直視したくなかった、なんだかいたたまれない気持ちになってしまって、この場に長居したくなかった。
「助けていただいてありがとうございました」
紗理奈は頭を下げて礼を告げる。俯き加減のまま、机へと目をやった。
飲んでいる途中のグラス。
手に取って、口をつけると一息に飲み干す。
名前の響きが良くて頼んだ酒だった。
喉がジンと熱くなる。
「それでは、失礼いたします」
「待て、君に大事な話がある」
近江が呼び止めるが、後ろを振り返りたくなかった。
人垣をするすると抜け、慌ててレジへ向かうと、店員に声を掛けて支払いを完成させる。
そうして、そのまま出入り口のある扉へと向かう。
カランカラン。
開閉時に鳴る鐘が鳴った。
紗理奈は、そのまま一歩を踏み出したのだが……
なんだか浮遊感がある。
目の前がグルグル回りはじめた。
「あれ?」
ヒールががくっと折れて、地面に跪いてしまった。
(あ……私……)
加減も分からず、馬鹿みたいに飲みすぎたようだ。
「待て、堂本紗理奈」
近江の声を耳にしたのを最後、紗理奈は気を失ったのだった。
(警視正の近江圭一。まさかまた助けられるなんて……)
トクントクン。
紗理奈の鼓動が高鳴っていく。
けれども、警察相手に心をときめかせている自分のことを認めたくなくて、紗理奈はふいっと顔を背けた。
「ちっ、なんだよ、連れがいるなら仕方ないな」
チャラチャラした男の腕がパッと離れる。
紗理奈がバランスを崩して倒れかかった。
「きゃっ!」
転倒して地面に頭をぶつける!
覚悟を決める。
けれども……
そのまま地面に倒れ伏してしまうことはなかった。
ふわり。
(あ……)
なぜならば、紗理奈は近江に抱き寄せられていたからだ。
紗理奈の肩に近江の厚い胸板が当たる。一見すると細身だが、警察官なので鍛えているのだろう。
彼の端整な顔が間近にあって、先程から鼓動が落ち着かない。
チャラチャラした男は、そそくさとバーの玄関から立ち去って行った。
店内の端の方での出来事だったからか、マスターも今しがたの事態には気づいていないようだ。というよりも、日常茶飯事で起きている出来事だから、敢えて無視しているのかもしれない。
紗理奈は逸る鼓動を落ち着けるために深呼吸をした後、思い切って近江へと声を掛ける。
「離してくださいますか?」
「ああ、すまない」
近江の方から紗理奈の身体からパッと離れた。
彼の温もりが去ると、少々寂しくなってしまう。
「逃げたところで同じだ、君は俺たち警察から保護対象としてマークされている。どこに行っても居場所は分かる」
「だったら、私の許可なんか取らずに、勝手にそうしていたら良いじゃないですか」
紗理奈は近江の顔を直視できず、ふいっと顔を背けた。
近江の顔を直視したくなかった、なんだかいたたまれない気持ちになってしまって、この場に長居したくなかった。
「助けていただいてありがとうございました」
紗理奈は頭を下げて礼を告げる。俯き加減のまま、机へと目をやった。
飲んでいる途中のグラス。
手に取って、口をつけると一息に飲み干す。
名前の響きが良くて頼んだ酒だった。
喉がジンと熱くなる。
「それでは、失礼いたします」
「待て、君に大事な話がある」
近江が呼び止めるが、後ろを振り返りたくなかった。
人垣をするすると抜け、慌ててレジへ向かうと、店員に声を掛けて支払いを完成させる。
そうして、そのまま出入り口のある扉へと向かう。
カランカラン。
開閉時に鳴る鐘が鳴った。
紗理奈は、そのまま一歩を踏み出したのだが……
なんだか浮遊感がある。
目の前がグルグル回りはじめた。
「あれ?」
ヒールががくっと折れて、地面に跪いてしまった。
(あ……私……)
加減も分からず、馬鹿みたいに飲みすぎたようだ。
「待て、堂本紗理奈」
近江の声を耳にしたのを最後、紗理奈は気を失ったのだった。