どん底貧乏美女は夢をあきらめない
食事の後、コーヒーを飲みながら、美玖に話をした。

「実は今日行った但馬リゾートトラステイは
ホテル改修の施主で、親父の言っていた
見合い相手の会社だったんだ。
それも、相手は但馬玲子というんだが、
彼女がホテル再生チームのトップらしい。
向こうが俺を指名してきて、親父に
頼み込んだらしいんだ。帰りに会社に
寄って親父に断りたいと言ったんだけど、
仕事でもいろいろ世話になっているから
断れないと言うんだ。相手の女性と毎回
一緒に打合せするのは気が滅入るし、
二人っきりにされて嵌められるのも困るから
美玖も毎回同行してくれないか?
気分が悪いだろうけど頼むよ。
本当に馴れ馴れしくて鬱陶しいんだ」

「そうなんですか?榊グループがお世話に
なっているという事ならお父さまも
お断りできないですよね」

「そうなんだ、でもごり押ししているのは
どうも会長つまり爺さんの方みたいなんだ。
とにかくなんかの雑誌で見たとか、
どこかのパーテイで会ったとか言われても
全然覚えてないし、美玖の事は婚約者だと
言って紹介するからそのつもりで、
いてほしい」

「わかりました」

美玖はにこやかに同意して

「大吾さんは大変ですね。
女性に人気があって一緒に歩いていても、
いつも女性が振り返って大吾さんを
見てますもんね。レストランなんかでも
視線を集めていて、鬱陶しくないですか?
いつも大変だなあと思っているんですよ」

「そうか?そんな事少しも感じないけどね
美玖の方こそ男どもが不躾な目線を
向けてくるじゃないか、嫌だろう?」

「そんなこと全然感じませんよ。
大吾さんの思い過ごしですよ」

「でも、美玖は俺をそんなふうに
かっこいいと思ってくれてるのか?」

「えっ、も、もちろん誰が見ても
大吾さんは素敵です。私が保証します」

そういって、顔を赤らめて風呂に入ってきますと言って逃げて行ってしまった。

大吾は美玖の言葉が嬉しくてにんまりとしてしまい、だらしない顔を見られなくて良かったと思ったのだった。
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