人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます
 厳しいこと言われて心臓がズキンと痛んだ。しかしもっともなことを言われたので私は頭を下げた。
「申し訳ありません」
「まあ……でも、院長の娘さんに仕事を押し付けられたら何も言えなくなってしまうよな」
 予想外の言葉に驚いて目を見開いた。しかしやはり人のことを悪く言いたくないのですぐに元通りの表情に戻す。
「体調だけは崩さないように」
「ありがとうございます……」
 宍戸ドクターは、私の横を通り過ぎていく。
 優しい言葉をかけてもらえると思わず、心臓の鼓動がトクトクと鳴った。
 私は階段を降りながら宍戸ドクターのことを考える。
 いつもクールであまり笑顔を見せないが、動物さんに接している時はものすごく優しい顔を向ける。
 あの表情を見た時、私の心臓はぎゅっとつかまれたようだった。
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