人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます
 先ほどまで寝ぼけている感じだったのに、立ち上がるとすっきりした表情に変わっている。チョコレート一つで回復するなんてスーパーマンなのではないだろうか。
「今度、お礼する」
「え? いえ……そんな、お礼なんて必要ありません」
 宍戸ドクターは私に背を向けると右手をさっと上げて、颯爽とその場から去って行った。
「……タフね」
「は、はい」
 今、お礼すると言われた。
 きっと社交辞令だろうけれど……チョコレートを喜んでくれてよかった。
 そんなことを考えているとまりえさんが近づいてきた。
「ちょっとドクターにチョコレートを渡すなんてどういうつもりなの?」
 まりえさんが腕を組んで私のことを睨みつけている。宍戸ドクターとのやり取りをいつからかわからないが見ていたのだろう。
「申し訳ありません」
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