人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます
 スタッフが下がっていくと彼はにっこりと笑った。
「フランス料理とイタリア料理の違いもはっきりとわからないよ。でもこういう場所で食事をするとロマンチックでいいよな。好きかなと思って、山井さんのことを思い浮かべながら予約したんだ」
 まるでアプローチされているみたい。アルコールも効いてきて少しリラックスしていたのに心臓がまたドキドキし始めた。
「酔っ払っても大丈夫。今日は部屋も予約してあるし」
「え!」
 あまりにも驚いて大きな声を出してしまいそうになった。
「冗談。まさか付き合う前から取って食べたりしないから大丈夫。でも山井さんとなら長い間いろいろ話をしてゆっくり過ごしてみたい。もっと山井さんのことを知りたいと思うんだよね。特定の女性に対してこんな気持ちになったのは初めてかもしれない」
 熱い眼差しを向けられた私は、いたたまれない気持ちになってしまった。
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