人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます
「まりえさんだけが悪いわけではありません。私は実は反対の意見でした。でもいつもお世話になっている先輩からの助言ですし逆らうことはいけないと思ったんです……」
 発言してしまった。恐怖心で心臓がバフバフと大きく鼓動を立てている。
「人のせいにするのもいい加減にして。仕事ができない上に嘘までつくの?」
「そんなつもり……」
 課長に助けを求めて視線を送るが、彼は私から目をそらした。
(この職場には味方がいない……)
 広い海の中にポツンと落とされたような気持ちになる。
 静まり返り、私は今でも泣きそうになった。
「両者の言ってることが違うということは、どちらかが嘘ついてるということだ」
「宍戸ドクター」
 いつからかわからないけれど話を聞いていたようだ。
「SNSは炎上してしまうこともあるが、それごときで病院の評価が落ちてしまうというのは俺らドクターの責任でもある。申し訳ない」
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