人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます
 周りにいる人たちは、関わらないようによしようという空気感を出していた。絶対に話が聞こえているのにパソコンから視線をずらさないのだ。
「SNSを担当していたのは山井さんだけでしょ?」
「……はい」
「自分の判断でやったっていうことよね? 周りの人に相談もせずに」
「……」
 違うと言いたかったけれど否定してしまえば、彼女を攻撃することになる。
 しかし、恐怖心から何も言わずにアップしてしまったことが原因だ。
 こははっきりと言わなければ、私は同じことを繰り返すことになる。
 手に握りこぶしを作ってまりえさんの瞳をしっかりと見た。
「お言葉ですが……まりえさんが退院したばかりの動物を取材したらどうだとおっしゃったんです」
「は? 担当は山井さんでしょ?」
 職場の空間の雰囲気が悪くなっていく。パソコンから視線をずらして、みんなはこちらに注目していた。
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