人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます
「どちらかというと自分の問題なんです」
「問題?」
 不思議そうな目を向けられたので、私は正直に話をしなければと思った。
「釣り合わないのではないかと思っていて……」
「何が?」
「すべてです」
「それは理由になってない。俺がいいと思っているんだからいいんだ」
 はっきりとした口調で言われたので、それ以上何も言い返せなくなってしまった。
「山井さんは、とても素敵だ。もっと自信持っていいんだぞ」
 そんな優しい瞳で言われると泣きそうになる。
「ありがとうございます」
「さ、帰って寝るか。ごちそうさま」
「いえいえ」
「またお礼する口実ができた」
 彼はニヤッとした。
 牛丼を一緒に食べることで生活の水準が違うんだと思ってもらうことが目的だったのに、話をしたらまた好きな気持ちが大きくなってしまった気がする。
 離れるのがものすごく寂しくなってしまった。
「一緒に寝るか?」
「ま、まさかっ」
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