人間が苦手なクールな獣医師が恋をして一途に迫ってきます
 いつも私が帰ろうとするギリギリの時間で仕事の依頼をしてくるのだ。
 もう少し早い時間に言ってくれたら業務内に終わらせることができるのに。
 しかしこの事務所内で私は一番の後輩である。まだまだ学ぶことが多い立場だし、お願いされたことはなるべく笑顔で仕事を引き受けることにしていた。
「はい。了解いたしました」
 本当はもう少し早い時間にお願いできますかと言えたらいいのかもしれないが、なかなか言えない。
 私のデスクにどさっと書類を置いた。
「じゃあ、これ全部お願いね。私はお先に失礼します」
 まりえさんが帰ろうとするタイミングで入ってきたのは、獣医師の宍戸広大(ししどこうだい)ドクターだ。
 彼はこの動物病院の中でも一番予約が多い。
 まだ若いのに海外で研修を受けてきたことを活かして治療に取り入れているのと、手術の腕がいい。夜間救急病院に勤めていた経験もあり判断能力も優れている。
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