無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
プロローグ

「羽菜が、初めからやり直そうと言ってくれてうれしかった」

 無口で無表情。愛情の欠片も感じられない夫との関係に限界を感じ、一度は別れを決意した。
 それなのに私は今、彼に組み敷かれきつく抱きしめられている。

 彼の声の切実さと、離れまいとするかのように体を引き寄せる腕の強さは、彼の想いの強さの表れのようだ。

 私のことなんて無関心だと思っていた彼が、頑なになった私の心を取り戻そうと誠実に努力してくれている。

「二度と間違ったりはしない。何よりも大切にするから」

 彼の低い声が耳をくすぐり、私の心臓はどきどきと忙しなく音を立てる。

  ――愛してる。

 彼が私に触れながら何度もささやかれると、もう意地は張れなかった。

 うれしいと、素直な喜びがこみ上げる。

『私たち、離婚しましょう』

 そう決心して告げたのが、今となっては遠い過去の出来事のよう。

 あのときはこんな結末が待っているとは思いもしなかったのに――。 

 
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