成瀬課長はヒミツにしたい【改稿版】
エピローグ
真理子と成瀬は、笑顔で手を振る乃菜と社長に見送られながら、パークの奥のイルミネーションスペースに向かって歩き出した。
真理子の頭にはティアラが、成瀬の頭には王冠がキラキラと光っている。
薄暗くなってきたパーク内で、その煌めきはひと際目を引いた。
道行く人が足を止めて振り返る様子を見ながら、真理子は“サワイのライト”をとても誇らしく感じていた。
しばらく歩くと、お城のイルミネーションが遠くに見えてきた。
真理子は「あれ?」と首を伸ばす。
イルミネーションのデザインが変わったのだろうか。
目の前には、白を基調としたお城が浮かび上がっていた。
成瀬は入り口でパークのスタッフにチケットを渡すと、真理子の手を引くように中に入る。
成瀬に連れられるまま、お城の真ん中に立った真理子は、あっと声をあげて口元を押さえた。
会場内の音楽が急に変わったかと思ったら、ライトの光に合わせてプロジェクションマッピングが動き出したのだ。
くるくると回る映像が、真理子と成瀬の目の前で停止する。
そこに映し出されていたのは
“Mariko & Toma♡ Congratulations! Forever Happy!”の文字。
「……素敵」
真理子は次第に潤んでくる瞳を感じながら、噛みしめるように声を出す。
すると、映像を見上げる真理子の左手を、成瀬がそっと持ち上げた。
「明彦と乃菜がお膳立てしてくれたんだ。俺はいつも肝心なところで、不器用だからな」
成瀬は肩をすくめると、持ち上げた真理子の左手の薬指に、そっと自分の指をスライドさせていく。
「え……」
真理子は成瀬の手の動きをじっと目で追った。
成瀬は薬指の根元までスライドさせた指を離すと、真理子の手を包むように握る。
真理子は成瀬の手の中で、かすかに震える自分の左手をそっと覗き込んだ。
「これって……」
今にも溢れそうな涙をこらえながらささやく。
真理子の目の前で輝くのは、Vカーブのまるでティアラのようなデザインの指輪だった。
真ん中の大粒のダイヤと、そこに寄り添うように添えられた、いくつもの小粒のダイヤ。
それを見つめながら、真理子は自分が、成瀬や社長や乃菜、他のみんなに支えられて、今ここに立っていられるような気がしていた。
すると急に、成瀬がぐっと手に力を入れ、真理子の身体を引き寄せた。
真理子はされるがまま身をゆだね、鼻先すれすれに成瀬の顔が近づく。
その瞬間、真理子の脳裏に、あの日の光景が蘇る。
成瀬のヒミツを知ってしまった日。
まるで策略にはまるかのように、強引に家政婦に引き込まれた、あの日のことを……。
――あぁ、そうだ。私たちは、あの日、ここから始まったんだ。
「水木真理子さん」
成瀬は悪戯っぽくにんまりとほほ笑むと、長い指先で真理子の顎をくっと持ち上げた。
「あなたには、私のパートナーになっていただきたい」
あの日と同じ、成瀬の甘く低い声が耳元で響く。
ただ一つ違うのは、今真理子の左手の薬指は、まるでイルミネーションのように、キラキラと輝いているということ……。
真理子はにっこりと口元を引き上げると、吸い込まれそうな愛しい瞳を見上げた。
「はい。なります。あなたのパートナーに……」
【完】
真理子の頭にはティアラが、成瀬の頭には王冠がキラキラと光っている。
薄暗くなってきたパーク内で、その煌めきはひと際目を引いた。
道行く人が足を止めて振り返る様子を見ながら、真理子は“サワイのライト”をとても誇らしく感じていた。
しばらく歩くと、お城のイルミネーションが遠くに見えてきた。
真理子は「あれ?」と首を伸ばす。
イルミネーションのデザインが変わったのだろうか。
目の前には、白を基調としたお城が浮かび上がっていた。
成瀬は入り口でパークのスタッフにチケットを渡すと、真理子の手を引くように中に入る。
成瀬に連れられるまま、お城の真ん中に立った真理子は、あっと声をあげて口元を押さえた。
会場内の音楽が急に変わったかと思ったら、ライトの光に合わせてプロジェクションマッピングが動き出したのだ。
くるくると回る映像が、真理子と成瀬の目の前で停止する。
そこに映し出されていたのは
“Mariko & Toma♡ Congratulations! Forever Happy!”の文字。
「……素敵」
真理子は次第に潤んでくる瞳を感じながら、噛みしめるように声を出す。
すると、映像を見上げる真理子の左手を、成瀬がそっと持ち上げた。
「明彦と乃菜がお膳立てしてくれたんだ。俺はいつも肝心なところで、不器用だからな」
成瀬は肩をすくめると、持ち上げた真理子の左手の薬指に、そっと自分の指をスライドさせていく。
「え……」
真理子は成瀬の手の動きをじっと目で追った。
成瀬は薬指の根元までスライドさせた指を離すと、真理子の手を包むように握る。
真理子は成瀬の手の中で、かすかに震える自分の左手をそっと覗き込んだ。
「これって……」
今にも溢れそうな涙をこらえながらささやく。
真理子の目の前で輝くのは、Vカーブのまるでティアラのようなデザインの指輪だった。
真ん中の大粒のダイヤと、そこに寄り添うように添えられた、いくつもの小粒のダイヤ。
それを見つめながら、真理子は自分が、成瀬や社長や乃菜、他のみんなに支えられて、今ここに立っていられるような気がしていた。
すると急に、成瀬がぐっと手に力を入れ、真理子の身体を引き寄せた。
真理子はされるがまま身をゆだね、鼻先すれすれに成瀬の顔が近づく。
その瞬間、真理子の脳裏に、あの日の光景が蘇る。
成瀬のヒミツを知ってしまった日。
まるで策略にはまるかのように、強引に家政婦に引き込まれた、あの日のことを……。
――あぁ、そうだ。私たちは、あの日、ここから始まったんだ。
「水木真理子さん」
成瀬は悪戯っぽくにんまりとほほ笑むと、長い指先で真理子の顎をくっと持ち上げた。
「あなたには、私のパートナーになっていただきたい」
あの日と同じ、成瀬の甘く低い声が耳元で響く。
ただ一つ違うのは、今真理子の左手の薬指は、まるでイルミネーションのように、キラキラと輝いているということ……。
真理子はにっこりと口元を引き上げると、吸い込まれそうな愛しい瞳を見上げた。
「はい。なります。あなたのパートナーに……」
【完】


