惚れさせゲーム
静寂の中の闘志
○学校・図書室(放課後)
静けさに包まれた図書室。
時計の針は夕方五時を指している。
窓から差し込む柔らかな光が、机の上に広がるノートと教科書を淡く照らしていた。

机に向かい、鉛筆を握りしめて問題集を睨む三峰紗菜。

紗菜(モノローグ)
「……ここまでは分かる。じゃあ、この式変形の次のステップは……」

一問一問、慎重に解き進める。
ページの隅には、小さな文字で計算のメモがびっしり書き込まれている。*

紗菜「……よし」

ノートに書いた答えを問題集の解答と照らし合わせる。正解。
小さく頷くと、新しいページを開く。

周囲からは「努力の人」と言われるが、紗菜自身は特別な才能があるとは思っていない。

ただ、人一倍努力しているだけ。

紗菜(モノローグ)
「天才なんかじゃない……だからこそ、努力を怠ればすぐに落ちこぼれる」

ペンを走らせながら、心の中で誓う。

紗菜(モノローグ)
「もっと上を目指さないと。誰にも負けたくない」

彼女の中には常に焦りがある。
トップでいることのプレッシャー、周囲の期待、自分に課したハードルの高さ。
もし勉強をやめてしまったら、何も残らなくなる気がする。

ふと、脳裏にある名前がよぎる。

紗菜(モノローグ)
「……それに、アイツにだけは負けたくない」

けれど、すぐに頭を振ってその考えを追い払う。

紗菜(モノローグ)
「余計なこと考えてる場合じゃない」

再び問題集を開き、戦場に立つ兵士のような表情で次の難問に立ち向かう。
図書室の静寂の中、ペンを走らせる音だけが響いていた――
< 1 / 45 >

この作品をシェア

pagetop