惚れさせゲーム
〇 ゲームセンター・クレーンゲーム前

ゲームセンターの片隅にあるクレーンゲームの前に立つ紗菜と翼。
カラフルなぬいぐるみが並ぶ中、紗菜の目線は一つの大きなクマのぬいぐるみに固定されている。
そのぬいぐるみは、ピンク色のリボンをつけた可愛らしいもので、紗菜の好きな色だった。*

紗菜「……あれ、すっごく欲しい」

紗菜が無意識に呟く。翼はそれを聞き逃さず、ニヤリと笑う。*

翼「ほう、狙いはあのクマか」

紗菜「う、うるさい! どうせ取れないし」

翼は少し考え込み、クレーンゲームの操作パネルに手を伸ばす。

翼「取れるかどうか、やってみなきゃわかんねぇだろ?」

紗菜「でも、私全然上手くないし……」

*翼は自信満々に操作パネルを握り、クレーンを動かす。*

翼「お前が上手いとか下手とか関係ねぇよ。俺が取ってやるから、黙って見てろ」

紗菜「ほんとに取れるの?」

翼は無言で集中してクレーンを操作する。その間、紗菜はドキドキしながらその様子を見守っていた。

数秒後、クレーンがターゲットを捉え、慎重にぬいぐるみを持ち上げる。紗菜は思わず息を呑む。

紗菜「え、まさか本当に?」

クレーンがぬいぐるみを少しずつ持ち上げ、次の瞬間、それを投げ入れる場所にぬいぐるみが落ちる。見事にゲット!

翼「ほら、取れたぞ!」

紗菜は驚きの表情を浮かべ、思わずそのぬいぐるみを手に取る。

紗菜「え、ほんとに……取れた!」

手に取ったぬいぐるみは、予想以上に大きくて、ピンク色のリボンがかわいく輝いている。

翼「どうだ? 俺にかかればこんなの簡単だよ」

紗菜「すごい……ありがとう、でもこんなの取ってもらっちゃって」

紗菜は少し照れながらぬいぐるみを抱え、もう一度その可愛さに見とれる。

翼「なんだよ、その顔。嬉しいんだろ?」

紗菜「……別に!」

けれど、紗菜の顔は少し赤くなっていた。

翼「まぁ、次はもっと難しいやつ取ってやるから、覚悟しとけよ」

その言葉に、紗菜は思わず苦笑いを浮かべる。

紗菜「次は自分で取るって決めたから!」

翼はまたもやニヤリと笑いながら、次のゲーム機を目指して歩き出す。*

翼 「それじゃ、次の罰ゲームに向けて、準備万端だな」

ゲームセンターの賑やかな雰囲気の中で、二人は一歩一歩、次の楽しみに向かって歩き出した。
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