惚れさせゲーム
勝負の行方
〇 夏祭りの余韻と新たな挑戦
夏祭りの余韻がまだ残る朝。蝉の声が響き、蒸し暑い空気が教室の窓から流れ込んでくる。

紗菜は自分の席に座りながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。昨夜の花火、屋台でのやり取り、そして――。

――来年も、お前と一緒に来たいって言ってんの

翼のあの言葉が、何度も頭の中で繰り返される。あれはどういう意味だったのか。単なる思いつき? それとも……。

桃羽(後ろからヒョイっと顔を出す)「……ねえねえ、紗菜?」

紗菜「ひゃっ!? な、なに!?」

桃羽(ニヤリ)「ふーん、そんなに驚くってことは、なんかやましいことでも考えてた?」

紗菜「べ、別に何も考えてないし!!」

慌てて顔をそらすが、その態度がますます怪しい。

桃羽「へえ~? もしかして昨日の夏祭りのこと考えてた?」

紗菜「……っ!」

桃羽(確信)「やっぱり! ほら、白状しなさいよ~! どんなデートだったの? ねえねえ!」

ニヤニヤしながら紗菜の肩を揺さぶる桃羽。紗菜はうるさそうにため息をつく。

紗菜「デートじゃない。ただの罰ゲームよ、罰ゲーム」

桃羽「へえ~? でも、罰ゲームのはずなのに、めっちゃ考えちゃってるのはなんで?」

紗菜「……っ!!」

言い返せない。まるで図星を突かれたかのように、紗菜はぎゅっと唇を噛んだ。

紗菜(モノローグ)
「……本当に、罰ゲームのはずなのに」

桃羽「で、で? 昨日は何かあったの? ちゃんと最後まで報告しなさい!」

紗菜「……何もない!」

桃羽「ふーん? じゃあ、翼くんが『来年も一緒に行こう』って言ったのはどういうことかな?」

紗菜「ぶっ……!! ちょっ、なんでそれ知ってるの!?」

桃羽(ドヤ顔)「そりゃあ、翼くんが今朝、自信満々に教室で言ってたからね?」

紗菜「な……!」

紗菜が目を見開いたその瞬間――。

翼(教室のドアを開けながら)「おっす、三峰! 今日も可愛いな!」

紗菜(顔真っ赤)「かっ……!? かかかか可愛いとか言うなああああ!!」

翼が何事もなかったかのように教室に入ってきて、当然のように紗菜の隣の席に座る。
そして、ニヤリと笑いながら言った。

翼「さて、そろそろ次の罰ゲーム決めるか?」

紗菜「……は?」

翼(悪戯っぽく)「そろそろ勝負しないと、お前、俺に惚れちゃうんじゃね?」

紗菜(顔真っ赤)「なっ……!! そんなことあるわけないでしょ!!!」

翼「へえ? じゃあ次の挑戦も受けるよな?」

紗菜(悔しそうに)「……受けてやるわよ!」

そうして、また新たな挑戦が始まる――。
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