無口な彼の内情を知ったら、溺愛されるようになりました……!?
「いっ……いでででででっ!」
目の前から聞こえる苦痛な声にパッと目を開けると、私へ伸びていた手は背中に回され体は床に押し付けられていた。
押さえつけてるのはーー誰?
彼の方をじっと見ていて、顔が見えない。
「へ……?」
突然の状況に目を丸くしていると、男を押さえつけた人が顔を上げた。
「何しに来た」
「み……緑谷くん」
押さえつけているのは、緑谷くんだった。
「いだっ。み、緑谷さんっ! 痛いっす! もう勘弁してくださいっ!」
「……悪い」
(部の規律を破って騒いでいるのかと早とちりをしてしまった。今日は、中等部の生徒のみ朝練をしているが、高等部の生徒がいたらコイツが酷い罰を受けるところだった)
涙目で押さえつけられてる彼に短く謝ると、パッと手を離した。
口数の少ない彼が、押さえつけていた彼のことを思って行動した事が分かり驚いた。
そんなこと考えてるなんて、思わなかった。
「それで、村崎。何しに来た」
次に私の事をジロッと見る緑谷くん。
鋭い眼光に後退りし、同級生の彼に対して緊張が走った。
「あ、あのーー私は、コレを」
そう言って風呂敷を彼の前に差し出すと、こてんと小首を傾げられた。