無口な彼の内情を知ったら、溺愛されるようになりました……!?
「ご、ごめんね……! 私、無理に話してるわけじゃなくて、緑谷くんのことは、知りたいと思ってるの。えっと、私あんまり男の子と話したことないから、どんなことを話したら良いのか分からなくて、それでっ」
まずは、その人を知りたい。そう思わないと。学校が同じ、クラスが同じ、空手部に所属している無口な男の子。
私が知ってるのは、これくらい。大昔のように、親が勝手に決めた政略結婚というわけではないのだから、まずは緑谷くんのことを知って二人で合意した上で婚約者にならなくちゃ。
気持ちを新たに、もう一度話しかけるとーー。
「無駄話するな」
「ーーえ?」
もっと、緑谷くんのことを知りたい。そう思っていた私をバッサリと切り捨てるように言われた。
「それじゃあ、また学校で」
言葉の弁明をしてくれるはずもなく、彼はすっと立ち上がって二人きりになったばかりの個室から出て行ってしまった。
これってーー婚約には至らなかった、ということ……!?
村崎 紫、休みを返上して初めてお見合い?のようなものに参加し、一分も経過しないうちに残念な結果で終えてしまいましたーー。