無口な彼の内情を知ったら、溺愛されるようになりました……!?
「ごめんね。驚かせるつもりはなかったんだ」
「う、ううん……私の方こそ、ごめんね。驚いちゃって」
「それで、紫ちゃん。何を考えていたの?」
ーーえ?
前の人の椅子に座り、私の方を向いて頬杖をつきながら尋ねてくる黄山くん。
う……黄山くんのこととか、翡翠くんのことなんて言えない。
「えっと、大したことじゃないよ」
「そうなの? 悩みがあるなら、ボクはいつでもキミの力になりたい。だって、キミはボクの大事な」
(取引材料だからね)
え……?
言葉の続きより、声が先に聞こえた。
というのもーー。
「ルイくん! ここにいたんだぁ。ねねっ、手伝って欲しいんだけど〜」
「ずるい! 私の方も手伝って!」
黄山くんを探していた女の子達が、教室に駆けつけて来たから声が聞こえなかった。
「ハハッ。慌てん坊なレディ達だ。すぐに行くよーーごめんね、紫ちゃん」
「う、ううん……! それより、さっき何て……?」
取引材料とは、どういうことなの?
それについて聞きたかったけれど。
「あぁ。キミはボクの大事なフィアンセって言いたかったんだ。言葉にして、キミにも早く婚約者はボクだと自覚して欲しいからね」
そう言って、彼らは外へ行き私はまた一人になった。