夜の図書室の司書になりました!
そんなやり取りを聞きつつ、私もミステリさんに声をかけた。
「ミステリさん? そろそろ、二つ目のほうも……って、あれ?」
ミステリさんが覗き込んでるベッドの下に、一瞬、変なものが見えた。
そこにはなにもないはずなのに。
「花音殿。今少し待っていただけますか。今、わたくしの目の前には、妙なものがあります」
「と……と言うと?」
「大けがをしたらしい、人間の亡骸です」
はいだめー!!
「そ、そんなもの見えてるんなら、なにかリアクションしてくださいよ!?」
「いえ、ですが、この亡骸は、どこかで見たような覚えがありまして」
「ええ!? し、知り合いとかじゃないですよね!?」
一瞬、ファンタジーさんとジュブナイルさんのことが頭をよぎって、ぞっとする。
「それがよく分からないのですよ……なにしろ、体の面積の九割がたが赤い液体にまみれていて」
それ以上は聞かずに、私はミステリさんを引っ張り起こした。
「ハイ体験しました! 完全にしました! 次ー!」
私たちは保健室から出た。
次は確か、トイレの個室で声が聞こえるんだっけ。
死体よりましだけど、ある意味では、ただ死体が転がってるより、こっちへの働き掛けがある分これはこれで嫌すぎる。
「ミステリさん、これってどこのトイレとか決まってるんですか?」
「多少の例外はあるようですが、基本的には四階の北側の女子トイレのようですな」
ああ……あの日当たりの悪い、じめじめしたトイレ……。
「よりによって、普段一番ひとけのないところじゃないですか……」
「怪談ですからな。人通りがあってにぎやかなところというわけにもいきますまい。それに夜世界には、もとより司書以外の人間はおりませんしな」
「うううう」
重い足を引きずって、ただでさえ遠い四階に上がった。
その途中に出てきた「夜の底の使い」は、ミステリさんがあっさり撃退してくれて、それは頼もしかったんだけど。
「到着しましたな」
「しちゃいましたね」
「では、行ってらっしゃいまし」
……。
えっ!?
「わ、私が行くんですか!?」
「むろん。女子トイレでありますから」
「夜世界にはほかに人いないって言ったじゃないですか!?」
「それはそれ、これはこれです。中には入れませんが、外からでもトイレの奥まで見通せますから、ここで見守っておりますよ。童話、絵本、君たちは花音殿を護衛なさい」
というわけで、私、童話さん、絵本さんでトイレの中に入る。
個室は三つあった。
「うう……どの個室とか、決まってるんですか……?」
「いえ、そこまでは。一つずつ入ってみてください」
とりあえず、空飛ぶうさぎと黒猫に挟まれて、一番手前の個室に入ってみる。
……なにも起きない。
次に、真ん中の個室。
声なんか聞きたくないのに、耳を澄まさなくちゃいけないという、変な感じでしばらく立ってた。
……なにも起きない。
「もしかしたらあ、風の音とかを昔の生徒が聞き間違えたのかもですよう」
「ああ、あるよなそういうの。ミーもこないだ、つむじ風の音が『ハラヘッター』って聞こえたし」
それはそれで不思議だけど、と思いながら、最後の個室。
このさらに奥はもう校舎の外壁で、なんにもない。
ドアを閉めて、耳を澄ました。
……なにも起きない。
「なんにも、聞こえませんですう」
「ああ、なーんにも。ここの七不思議はハズレだったってことかもな」
ハズレでいいです、文句ないです。むしろ私的にはアタリです。
そう思いながら、ため息をついて個室を出ようとした時。
「こっちに来い……」
「え? 絵本さん、なにか言いました?」
「ミーが? いや、なんにも」
「ウチもなにも言ってませんですう」
おかしいな。今確かに。
「こっちに来い」
童話さんと絵本さんが、ぴたりと動きを止めた。
「今のはあ……ウチにも聞こえたですう」
「ミーもだ。……花音、変ないたずらすんなよ」
「してません……」
「こっちに来い」
ぞくっ、と鳥肌が立った。
絵本さんは飛ぶのをやめて私の肩につかまり、童話さんもふくらはぎにがしっとしがみついてくる。
だって。だって、今の声……
「おい、花音……今の声、どこから聞こえた?」
「えっと……奥……。この個室より、もっと奥から、壁越しに……」
「奥って、ミーたちがいるこの個室、一番奥だったよな?」
「そうですう……この奥は個室のじゃなくて建物の壁で、その向こうはなんにもない空ですう……」
肩と足に、ぶるぶると震えを感じながら、私は言った。
「でも、隣の個室がないのに、そっちから声なんてするわけないですよね……?」
すると。
「こっちに来いいい!!」
「きゃあああああっ!」
私は弾き飛ばすようにドアを開けると、女子トイレの入り口に走った。
そしてミステリさんに抱き着く。
「で、出ましたあああっ!」
「むう。レディをこんなふうに驚かせるとは、いささか感心しかねる七不思議ですな。しかし、感情をはっきりあらわにしたお顔もキュートですな、花音殿」
「ありがとうございます!? じゃなくて、い、今、聞こえました!?」
ミステリさんは、長い髪をさらりとかき上げる。
「聞こえましたとも。ここから見ていても変化はなかったので、声はおそらく壁の向こうの外からしたのでしょうな」
「人間は四階の外から大声で人呼んだりできません!」
「人ではないといいますのに。お化けが、人にできることしかできなかったら、逆に怖いではありませんか」
「そ、そうですけどそうじゃなくてえ!」
ミステリさんはどこまでも落ち着いた様子で、私の肩と足にまだくっついてる精霊二匹をつまみ上げる。
「ボディガードがそんなことではいけませんな」
童話さんがぶんぶんと顔を横に振る。長い耳がぱたぱたと自分の顔を打ってたけど、気にもしてない。
「そんなの無理ですう! もうこれもいいでしょですう! 早く次行きましょうですうう!」
「そうですな。わたくしも、恐怖を理由に花音殿を腕の中に収めているのは、少々気がとがめますので」
そう言われて、私は、自分ががっちりとミステリさんのお腹に腕を回して捕まえちゃってることに気づいた。
「あっ!? す、すみませんっ!?」
言葉遣いは堅苦しいけど、見た目は高校生くらいの男の子だもん。我に返ると、どきっとしちゃう。
「いえ、わたくしこそ。全員で狭い個室に入ると、『夜の底の使い』に追い込まれればひとたまりもないと思いここに控えておりましたが、恐ろしい目に合わせてしまいましたね。どうかお許しください」
あ。そ、そうだったんだ。
ぱっと離れた私が足元を見ると、いくつかの黒い影が散り散りになっていくところだった。
今のちょっとの間にも、こんなに。ミステリさんがやっつけてくれたんだ。
私も、童話さんも絵本さんも、「夜の底の使い」相手にちゃんと戦えるわけじゃない。実質的にミステリさん一人で、私たちを守ってくれてるんだ、今。
「すみませんでした、私、わがまま言って……」
「おや、卿が謝ることなどなにもありませんよ、花音殿」
「……あの、今更なんですけど、そのケイってなんなんですか?」
実はよく分かってなかったんだけど。
「これは、『あなた』という意味です」
「へえ……」
「あまり今の社会では使わないと思いますが、花音殿がいろいろな物語を読んでいけば、いずれはどこかで見かけるかもしれませんね」
「私それ見たら、絶対にミステリさん思い出しちゃいます」
「フフフ、光栄の極みですな」
こういう口調の男の子には、たぶん夜世界の外では会うことはないだろうなあ……。
「さて、次は屋上から身投げする幽霊です。となると、屋外に出たほうがよいかと」
「そうですね。でも屋上からって言っても、どこのことだか分かりませんけど……」
「まあおそらく、そんなに苦労せずに見つかるかと思いますよ」
なんでそんなことが分かるんですか、と思いつつ、昇降口から外に出た。
私の中学は二つの棟に分かれてて、昇降口は西棟にある。
これから、屋上を見ながら西棟と東棟をぐるぐる回っていかないといけないのかなあ……と思っていたら。
外に出てすぐ、私たちが今までいた西棟の屋上、その南側の端で、なにかがひらっとひるがえった。
「……ミステリさん。暗くてよく見えないですけど、あの屋上の端っこのところ」
「ああ。どうやら、女子学生のようですな。制服を着ています」
「……ということは、もしかしてこれから、あの人が……」
私の言葉の途中で、女子学生――推定――がぱっと屋上から飛び下りた。
「きゃあ!?」
ミステリさんが、さっと手のひらを私の目の前に出したので、墜落の瞬間は見ずに済んだ。
でも、ごとんっ……っていう鈍い音が聞こえた。
幽霊なんだとしても、全然聞きたい音じゃない。……ていうか、幽霊って地面に落ちた時に音が鳴るんだ……。
おそるおそるミステリさんの手の横からそっちを見てみると、植え込みのせいで幽霊がどうなったのかは見えなかった。
……できれば、あんまり見たくないなあ。
「あれ、見に行かなきゃだめなんでしょうか……」
「いえ、必要ないでしょう。飛び下りるところは見たわけですからね。現実の事件と違って、現場検証するわけではなし。さ、校内へ戻りましょう」
うう、気分悪いよう。
それで次は、確か、永遠に続く階段とかなんとか……ってことは、まず階段に行かなきゃなのかな。
私たちは、昇降口の近くにある適当な階段を上がった。
童話さんはやっぱり浮いてるのでそのまま私についてきて、絵本さんはとことこと階段を上がってくる。
「ミステリさん、これはどこの階段とかあるんですか?」
「今回は、特に指定がないようですな。ただ、いわゆる無限階段――下り階段が無限に続くというものなので、二階以上のどこかから降りるのでしょうが。この中学には、地下はありませんからな」
飛び降りの幽霊はすぐに見つかったけど、階段はどうだろう。
片っ端から降りてみるしかないのかな。
踊り場でターンして、私たちは二階に上がる。
「……ミステリさん。ファンタジーさんとジュブナイルさん、あの後どうなったんでしょう」
「あの二人に限って、めったなことはないでしょう。あちらもわたくしたちを探しているかもしれません」
「別れたのは一階ですよね。まだ、一階のどこかにいるのかな……」
「探してみますか? 七不思議の階段を探すのは、合流してからでも遅くありませんし」
「ミステリさん? そろそろ、二つ目のほうも……って、あれ?」
ミステリさんが覗き込んでるベッドの下に、一瞬、変なものが見えた。
そこにはなにもないはずなのに。
「花音殿。今少し待っていただけますか。今、わたくしの目の前には、妙なものがあります」
「と……と言うと?」
「大けがをしたらしい、人間の亡骸です」
はいだめー!!
「そ、そんなもの見えてるんなら、なにかリアクションしてくださいよ!?」
「いえ、ですが、この亡骸は、どこかで見たような覚えがありまして」
「ええ!? し、知り合いとかじゃないですよね!?」
一瞬、ファンタジーさんとジュブナイルさんのことが頭をよぎって、ぞっとする。
「それがよく分からないのですよ……なにしろ、体の面積の九割がたが赤い液体にまみれていて」
それ以上は聞かずに、私はミステリさんを引っ張り起こした。
「ハイ体験しました! 完全にしました! 次ー!」
私たちは保健室から出た。
次は確か、トイレの個室で声が聞こえるんだっけ。
死体よりましだけど、ある意味では、ただ死体が転がってるより、こっちへの働き掛けがある分これはこれで嫌すぎる。
「ミステリさん、これってどこのトイレとか決まってるんですか?」
「多少の例外はあるようですが、基本的には四階の北側の女子トイレのようですな」
ああ……あの日当たりの悪い、じめじめしたトイレ……。
「よりによって、普段一番ひとけのないところじゃないですか……」
「怪談ですからな。人通りがあってにぎやかなところというわけにもいきますまい。それに夜世界には、もとより司書以外の人間はおりませんしな」
「うううう」
重い足を引きずって、ただでさえ遠い四階に上がった。
その途中に出てきた「夜の底の使い」は、ミステリさんがあっさり撃退してくれて、それは頼もしかったんだけど。
「到着しましたな」
「しちゃいましたね」
「では、行ってらっしゃいまし」
……。
えっ!?
「わ、私が行くんですか!?」
「むろん。女子トイレでありますから」
「夜世界にはほかに人いないって言ったじゃないですか!?」
「それはそれ、これはこれです。中には入れませんが、外からでもトイレの奥まで見通せますから、ここで見守っておりますよ。童話、絵本、君たちは花音殿を護衛なさい」
というわけで、私、童話さん、絵本さんでトイレの中に入る。
個室は三つあった。
「うう……どの個室とか、決まってるんですか……?」
「いえ、そこまでは。一つずつ入ってみてください」
とりあえず、空飛ぶうさぎと黒猫に挟まれて、一番手前の個室に入ってみる。
……なにも起きない。
次に、真ん中の個室。
声なんか聞きたくないのに、耳を澄まさなくちゃいけないという、変な感じでしばらく立ってた。
……なにも起きない。
「もしかしたらあ、風の音とかを昔の生徒が聞き間違えたのかもですよう」
「ああ、あるよなそういうの。ミーもこないだ、つむじ風の音が『ハラヘッター』って聞こえたし」
それはそれで不思議だけど、と思いながら、最後の個室。
このさらに奥はもう校舎の外壁で、なんにもない。
ドアを閉めて、耳を澄ました。
……なにも起きない。
「なんにも、聞こえませんですう」
「ああ、なーんにも。ここの七不思議はハズレだったってことかもな」
ハズレでいいです、文句ないです。むしろ私的にはアタリです。
そう思いながら、ため息をついて個室を出ようとした時。
「こっちに来い……」
「え? 絵本さん、なにか言いました?」
「ミーが? いや、なんにも」
「ウチもなにも言ってませんですう」
おかしいな。今確かに。
「こっちに来い」
童話さんと絵本さんが、ぴたりと動きを止めた。
「今のはあ……ウチにも聞こえたですう」
「ミーもだ。……花音、変ないたずらすんなよ」
「してません……」
「こっちに来い」
ぞくっ、と鳥肌が立った。
絵本さんは飛ぶのをやめて私の肩につかまり、童話さんもふくらはぎにがしっとしがみついてくる。
だって。だって、今の声……
「おい、花音……今の声、どこから聞こえた?」
「えっと……奥……。この個室より、もっと奥から、壁越しに……」
「奥って、ミーたちがいるこの個室、一番奥だったよな?」
「そうですう……この奥は個室のじゃなくて建物の壁で、その向こうはなんにもない空ですう……」
肩と足に、ぶるぶると震えを感じながら、私は言った。
「でも、隣の個室がないのに、そっちから声なんてするわけないですよね……?」
すると。
「こっちに来いいい!!」
「きゃあああああっ!」
私は弾き飛ばすようにドアを開けると、女子トイレの入り口に走った。
そしてミステリさんに抱き着く。
「で、出ましたあああっ!」
「むう。レディをこんなふうに驚かせるとは、いささか感心しかねる七不思議ですな。しかし、感情をはっきりあらわにしたお顔もキュートですな、花音殿」
「ありがとうございます!? じゃなくて、い、今、聞こえました!?」
ミステリさんは、長い髪をさらりとかき上げる。
「聞こえましたとも。ここから見ていても変化はなかったので、声はおそらく壁の向こうの外からしたのでしょうな」
「人間は四階の外から大声で人呼んだりできません!」
「人ではないといいますのに。お化けが、人にできることしかできなかったら、逆に怖いではありませんか」
「そ、そうですけどそうじゃなくてえ!」
ミステリさんはどこまでも落ち着いた様子で、私の肩と足にまだくっついてる精霊二匹をつまみ上げる。
「ボディガードがそんなことではいけませんな」
童話さんがぶんぶんと顔を横に振る。長い耳がぱたぱたと自分の顔を打ってたけど、気にもしてない。
「そんなの無理ですう! もうこれもいいでしょですう! 早く次行きましょうですうう!」
「そうですな。わたくしも、恐怖を理由に花音殿を腕の中に収めているのは、少々気がとがめますので」
そう言われて、私は、自分ががっちりとミステリさんのお腹に腕を回して捕まえちゃってることに気づいた。
「あっ!? す、すみませんっ!?」
言葉遣いは堅苦しいけど、見た目は高校生くらいの男の子だもん。我に返ると、どきっとしちゃう。
「いえ、わたくしこそ。全員で狭い個室に入ると、『夜の底の使い』に追い込まれればひとたまりもないと思いここに控えておりましたが、恐ろしい目に合わせてしまいましたね。どうかお許しください」
あ。そ、そうだったんだ。
ぱっと離れた私が足元を見ると、いくつかの黒い影が散り散りになっていくところだった。
今のちょっとの間にも、こんなに。ミステリさんがやっつけてくれたんだ。
私も、童話さんも絵本さんも、「夜の底の使い」相手にちゃんと戦えるわけじゃない。実質的にミステリさん一人で、私たちを守ってくれてるんだ、今。
「すみませんでした、私、わがまま言って……」
「おや、卿が謝ることなどなにもありませんよ、花音殿」
「……あの、今更なんですけど、そのケイってなんなんですか?」
実はよく分かってなかったんだけど。
「これは、『あなた』という意味です」
「へえ……」
「あまり今の社会では使わないと思いますが、花音殿がいろいろな物語を読んでいけば、いずれはどこかで見かけるかもしれませんね」
「私それ見たら、絶対にミステリさん思い出しちゃいます」
「フフフ、光栄の極みですな」
こういう口調の男の子には、たぶん夜世界の外では会うことはないだろうなあ……。
「さて、次は屋上から身投げする幽霊です。となると、屋外に出たほうがよいかと」
「そうですね。でも屋上からって言っても、どこのことだか分かりませんけど……」
「まあおそらく、そんなに苦労せずに見つかるかと思いますよ」
なんでそんなことが分かるんですか、と思いつつ、昇降口から外に出た。
私の中学は二つの棟に分かれてて、昇降口は西棟にある。
これから、屋上を見ながら西棟と東棟をぐるぐる回っていかないといけないのかなあ……と思っていたら。
外に出てすぐ、私たちが今までいた西棟の屋上、その南側の端で、なにかがひらっとひるがえった。
「……ミステリさん。暗くてよく見えないですけど、あの屋上の端っこのところ」
「ああ。どうやら、女子学生のようですな。制服を着ています」
「……ということは、もしかしてこれから、あの人が……」
私の言葉の途中で、女子学生――推定――がぱっと屋上から飛び下りた。
「きゃあ!?」
ミステリさんが、さっと手のひらを私の目の前に出したので、墜落の瞬間は見ずに済んだ。
でも、ごとんっ……っていう鈍い音が聞こえた。
幽霊なんだとしても、全然聞きたい音じゃない。……ていうか、幽霊って地面に落ちた時に音が鳴るんだ……。
おそるおそるミステリさんの手の横からそっちを見てみると、植え込みのせいで幽霊がどうなったのかは見えなかった。
……できれば、あんまり見たくないなあ。
「あれ、見に行かなきゃだめなんでしょうか……」
「いえ、必要ないでしょう。飛び下りるところは見たわけですからね。現実の事件と違って、現場検証するわけではなし。さ、校内へ戻りましょう」
うう、気分悪いよう。
それで次は、確か、永遠に続く階段とかなんとか……ってことは、まず階段に行かなきゃなのかな。
私たちは、昇降口の近くにある適当な階段を上がった。
童話さんはやっぱり浮いてるのでそのまま私についてきて、絵本さんはとことこと階段を上がってくる。
「ミステリさん、これはどこの階段とかあるんですか?」
「今回は、特に指定がないようですな。ただ、いわゆる無限階段――下り階段が無限に続くというものなので、二階以上のどこかから降りるのでしょうが。この中学には、地下はありませんからな」
飛び降りの幽霊はすぐに見つかったけど、階段はどうだろう。
片っ端から降りてみるしかないのかな。
踊り場でターンして、私たちは二階に上がる。
「……ミステリさん。ファンタジーさんとジュブナイルさん、あの後どうなったんでしょう」
「あの二人に限って、めったなことはないでしょう。あちらもわたくしたちを探しているかもしれません」
「別れたのは一階ですよね。まだ、一階のどこかにいるのかな……」
「探してみますか? 七不思議の階段を探すのは、合流してからでも遅くありませんし」