ONE NIGHT BATTLE
「河上は同僚だけど」
悠からひと握りの髪の毛を取り返し、整えながら睨みつける。と、悠の唇から、かろうじて聞き取れる音量のため息がこぼれた。
「俺がバグったのそういうことか」
「そういうこととは?」
ほんの僅かに口角を上げ目線を流してくる悠。そのままグラス内の液体を一気に飲み干したと同時に、回答を拒絶した目線が上に行き、怪訝そうに眉をひそめた。
最悪。河上がお手洗いから戻ってきた。
「月城?知り合い?」
今日は仕事終わりに同じ営業課のメンバー数人で飲んだあと、河上に話があると言われ、このバーに来たのだ。
「ごめん、ただの顔見知り」
「は?俺は知り合い以下かよ。ツキシロミオさん」
名字を知られたってどうってことないけど言い方。語尾が楽しそうに跳ねて、なんかムカつく。
つい、噛みつきたくなる。
「偶然たまたまバーで何度か一緒になっただけだけど?」
「たまたまで3週連続会うか?しかも3回とも違う店で。偶然もここまで来ると運命だろ」
「単なる偶然の連続を運命にされちゃたまんない」
ピリついた空気を察した河上が、座ることなく立ったまま「月城、もう帰ろう」と私の肩に手を置いた。
「ごめん。何か話があったんじゃない?」
「まあ...また今度にするわ」
チラリ、悠に目をやった河上がそう言った。そっかそうだよね。仕事の話を部外者の前ではできない。