眠り王子と夢中の恋。
その後、同じクラスに彼女がいたことに俺は抑えきれないほどの喜びを感じた。

鈴崎美夜。

名前さえも愛しいと思ってしまうなんて、重症だな。

すぐに話しかけたかった。
笑いかけて、あわよくば側にいたいと思った。

けどそれは不可能だった。

桜咲さんが中心になり、クラスだけでなく学年全員が彼女を非難していたから。

人当たりがいいとよく言われる俺でも、この状況で彼女に話しかけるなんてできなかった。

だから、彼女を気にかけることしかできなかった。

今では本当に悔やんでいる。
『後悔先に立たず』とはよく言ったものだ。

俺にできたことは他になかったのか。

彼女の傷を癒やすことは本当に不可能だったのか。

明るく笑いかけることはできなかったのか。

そう思っては胸が痛む。

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