眠り王子と夢中の恋。
私は息を吐き出すと思い切って玲音の手を握った。
「お願い……します」
下を向いて言う。
「……ふっ、任せろ」
笑ったかと思うと私の腰を抱き寄せ、パチン、と指を鳴らした。
驚いて顔を上げると、周りを見て言葉を失う。
「え、ここって……!」
ザザーン……と静かに音を立てる波打ち際。
月が映る水面。
遥か遠くに見える水平線。
横を見ると、砂浜がずっと続いている。
「『海』に飛んだんだ。
しかも今は夜だから月が出ている」
「わ……綺麗、ですね。夢界にもこんな場所が……」
「最初に言っただろ?したいことは全てできると。
俺が指を鳴らせばいろんな場所に飛べるし、なんでもでてくる」