最愛から2番目の恋
「許すしか無いだろう。
 ここに来るまでに作っていた口座だ。
 王太子妃の予算をどうこうして、アストリッツァの金で作った口座じゃないんだ。
 ……こちらはそこまで……で、脅すと言うのは?」

 以前のあの、頭の悪そうな男は何処へ?
 冷静に妻の言葉に耳を傾ける夫は、まともに。
 いや、まともを通り越して、怜悧とさえ見える。


「最愛様が『このまま無事に済むと……』と仰いましたから、わたくしは」

 ここまで聞いてクラシオンは隣に座る自分を、祈るように必死に見つめるマリツァに顔を向けたが、それは一瞬で。
 再びガートルードに視線を合わせたが、心なしか先程より憎々しさは消えているように思えた。


「わたくしのメイドの中には、サンペルグの手の者が紛れているとお伝えしたのです。
 ……もし、わたくしの身に何か起きれば、聖教会が動く、と……
 事実をお伝えしたまで」

「……なるほど、それは脅しと取られても、仕方がない」

「で、でしょう?
 わたしは脅されたの! 分かってくれた?」

「……脅したのは君だ、マリィ。
 妃はそうなった時の流れを説明したまで」

「……」

「だが、聖教会の権力を笠に着て、言ってくれたものだな?
 お前……恥ずかしくないのか?
 サンペルグの名前に守られている事を自慢したいのか?
 金さえ積めば、の神の権力に依存するしかない自分が恥ずかしくないのか?」

< 50 / 197 >

この作品をシェア

pagetop